アフリカン・ディスコの名盤とされるシディク・ブアリの「レヴォリューション」です。副題は「ライヴ・ディスコ・ショー・イン・ニュー・ヨーク・シティ」とされていますが、ライヴはアルバムの半分で、残りの半分はスタジオ録音です。

 アーティストはガーナの元アスリート、シディク・ブアリです。シディクは陸上競技の選手で、アフリカ大会では400メートルや1600メートル・リレーで活躍してメダルを獲得しています。本格的なアスリートです。アメリカに留学したのもそのアスリートとしての功績故です。

 しかし、奨学金で入ったのはなんとニューヨークの音楽学校です。ここでアスリートらしく野球に熱中したシディクですが、チームのために歌っているのを聴いた音楽の先生がリズム・セクションをつけて録音することを勧めると、そのデモがデビューに結びつきました。

 最初のアルバムはバーナード・パーディーやゴードン・エドワーズなど一流のセッション・マンが参加し、「ラッパーズ・ディライト」のスティーヴ・ジェロームがエンジニアリングを手掛けるというニューヨーク・スタイルで成功を収めました。1975年のことです。

 本作品はその4年後、1979年に発表されたアルバムです。ライヴはニューヨークのラ・チアー・ナイトクラブでのショーを録音したものです。♪インターナショナル・スーパースター♪と紹介されて登場するシディクは4曲通してぎんぎんのディスコ・サウンドを聴かせます。

 デビューの経緯からして分かる通り、ガーナのバンドが米国に出てきたわけではなく、メンバーは必ずしもガーナ人というわけではありません。シディクのダイレクションによるアフリカンなテイストのニューヨーク・ディスコ・ファンク・サウンドです。

 最初の2曲は重いベースラインが反復する呪術的なディスコ・ファンクで、ピヨンピヨンなるシンセが時代を感じて楽しいです。ライヴの後半は高速ビートのディスコ・チューン「ディス・イズ・ミュージック」とヒット曲「ディスコ・サッカー」で、こちらはロック調でかっこいいです。

 コール&レスポンスや刻むギター、反復するビートなどアフロ・ビート的なサウンドとディスコ・サウンドが合体したまさにアフリカン・ディスコなサウンドが展開されていて、これは一気通貫で聴くしかありません。あれこれ小技も聴いていて本当に楽しいサウンドです。

 B面はかなり様相が異なります。アルバム・タイトル曲と続く曲は、1979年にローリング大尉がガーナで起こしたクーデターを讃える歌です。軍事クーデターながら腐敗する軍事政権を打倒した革命ですから、当時のガーナ国民はこれを歓迎していたのでした。

 こちらはガーナのハイライフにも通じるトロピカルなサウンドでシディクが政治的なメッセージを力強く歌っていきます。次は一転ハッピーなクリスマスと新年の挨拶ソングで最後はファンキー&ハッピーな「ハッピー・バースデー」と振れ幅が大きいです。

 シディクはこの後ガーナに戻って音楽活動を続けたことに加え、劇場やナイトクラブを運営し、ダンス・バンドを結成して後進を育成するなどガーナの音楽や映画産業に大いに貢献します。ガーナ音楽界のレジェンドのニューヨーク・ディスコ時代、かっこいいですね。

Revolution (Live Disco Show In New York City) / Sidiku Buari (1979 Angel International)