日本のMTVでも頻繁にオンエアされていたのが「インターギャラクティック」でした。ビースティー・ボーイズの5枚目のアルバム「ハロー・ナスティ」の先行シングルとして発表されたこの曲は撮影場所が日本だということもあって、ここ日本でも大いに盛り上がりました。

 反射材付きの工事用作業服を身につけ、ヘルメットをかぶったビースティー・ボーイズの三人が渋谷や新宿駅でヒップホップを踊りながら歌う映像と、巨大ロボットと怪獣の戦いとをミックスしたMVはとにかく楽しいことこの上ありませんでした。

 このMVのロボットのモデルとなったのはジャイアント・ロボなんですね。そもそもジャイアント・ロボを海外でも放映していたということに驚きます。私の子どもの頃の不器用な特撮TV番組は1969年から1980年代にかけて米国でも放映されていたようです。

 ともあれ、シングルは全米トップ40に入るヒットとなり、グラミー賞も受賞、MVもMTVのベスト・ヒップホップ・ビデオに輝きました。久しぶりにすかっとしたヒップホップ仕様の曲が登場してビースティー・ボーイズの存在を改めて知らしめたMVでした。

 前作を発表してから4年。その間、ビースティー・ボーイズは遊んでいたわけではなく、ロラパルーザ・ロックフェスでヘッドライナーを務めたり、チベット救済コンサートを主宰したりと忙しく活動していました。本作のレコーディングはその間にぼちぼち行われたようです。

 デビュー作以降、かなりパンク寄りになっていたビースティー・ボーイズのサウンドですが、この作品ではヒップホップのルーツに今一度立ち返ったかのようなサウンドを聴かせてくれます。ヒップホップに造詣が深いわけでもない私でさえ、そのことが嬉しかったです。

 本作品ではアドロック、マイク・D、MCAの三人に加えてDJとしてミックス・マスター・マイクが参加しています。マイクはDJの中でもターンテーブリストとして知られ、その定評あるスクラッチ・テクニックで数々のコンペで賞を総なめにしています。

 マイクの活躍でライブ感あふれるビートが作り出され、そこに三人のラップが絡んでいくという得も言われぬスタイルが生まれています。そのスタイルを如実に示したのが「スリーMC・アンド・ワンDJ」で、無上のかっこよさです。

 またビースティー・ボーイズのメンバーといってよいマニー・マークが参加している他、多彩なゲスト陣も参加しています。中でも目立つのはリー・スクラッチ・ペリーです。その名も「ドクダー・リー・phD」なる曲でド迫力のボーカルを披露しています。

 そしてニューヨークを拠点とするユニット、チボ・マットのボーカル羽鳥美保も参加しています。彼らの場合、自分たちのサウンドにゲストを引き込むというよりも、ゲストに寄せたサウンドを作り出しています。それもあって、全体にヒップホップ寄りながらも何でもありです。

 本作品はもちろん全米1位に輝きましたし、日本を含む全世界でヒットしています。デビュー作の勢いにはかないませんけれども、格段にパワーアップした悪ガキ三人組が本領を発揮したアルバムです。私も随分聴いたものです。かっこいいです。

Hello Nasty / Beastie Boys (1998 Capitol)