私が洋楽に目覚めたのは1970年代の初めですが、その時すでにクリームは伝説のバンドでした。同じようにすでに解散していたバンドにビートルズがありましたが、クリームはより玄人っぽい感じで洋楽上級者向けの存在でしたから余計に憧れたものです。

 クリームはエリック・クラプトン、ジンジャー・ベイカー、ジャック・ブルースというスーパースターが集ったトリオですが、彼らの前歴など聞いてもよく分からず、ただただスーパースターが集まったスーパー・グループであるという情報だけが頭の中を駆け抜けていきました。

 そんな伝説のバンドのサウンドに初めて触れたのはセカンド・アルバムの本作「カラフル・クリーム」でした。レコードを包むサイケデリック全開のジャケットがこれまた期待をいや増しに高める効果をもたらし、伝説のバンドは違うわいと聴く前から感動したものです。

 しかし、実際に聴いてみてびっくりしました。スーパースターが火花を散らすインプロビゼーションを繰り広げるという噂とは程遠く、短くまとまった楽曲が11曲もてんこ盛りになっていたからです。そう、クリームはスタジオとライブではまるで違うバンドだったんです。

 というわけで、本作品はスタジオ・クリームの傑作です。デビュー作となる前作から1年足らずの間隔で発表された本作は英米ともにトップ10に入るヒットとなり、スーパー・トリオ、クリームの名前を改めて大西洋の両側に轟かせました。

 アルバムは米国ツアーの最後にニューヨークのアトランティック・スタジオで制作されました。エンジニアはかのトム・ダウド、プロデューサーはフェリックス・パッパラルディが当たっています。彼らはこれが初顔合わせだったそうです。大胆です。

 ダウドはオールマンズを始め数多くの名盤に名を残すアトランティックのエンジニアですし、パッパラルディは後にマウンテンとなる人ですが、まずはクリームのプロデューサーとして紹介されることが多い。よほどこの仕事の評価が高かったものと思われます。

 アルバムはパッパラルディと奥さんのゲイル・コリンズがブルース曲「ロウディ・ママ」を改作したという「ストレンジ・ブルー」で始まります。サイケデリック・ブルースとでもいえる不思議な曲です。まさにストレンジです。これが先行して全英チャートでヒットします。

 続く「サンシャイン・ラヴ」はクリームの代表曲の一つで、ヒット曲でジャック・ブルースが本領を発揮した印象的な曲です。この曲はアルバム中で唯一4分を越えています。というわけで、短い曲が連打されている様子が分かります。長尺のソロはほとんどありません。

 ジャック・ブルースが核となって、ブルースっぽくてかつサイケデリック、ポップながら強面、浮ついたところのないストイックなサウンドがアルバムの品を高めています。売れてもけっして安くならず、孤高の地位を固めていきます。確かに凄味があります。

 ただし、録音はいかにも1967年という年代を感じます。ビートルズを例外としてこの頃のロックのレコーディングはやはり古臭い。サイケデリックだからこれでよいのかもしれませんし、そこも込みで本作品の魅力ではありますけれども。

Disraeli Gears / Cream (1967 Reaction)