バウハウスの4枚目のアルバムです。残念なことにこのアルバムを最後にバウハウスは一旦解散してしまいます。のちの復活は随分後の話ですから、これを最後のアルバムとしておいても全く違和感はありません。25年後の復活はやはりエピローグでしょう。

 「バーニング・フロム・ジ・インサイド」とは内側から燃え上がる炎ですから、なんともエモーショナルなタイトルです。あのバウハウスが、とちょっと意外だったのですが、何と実際に彼らは車が中から燃える事件に遭遇したんだそうですね。

 本作の冒頭に収録されている「シーズ・イン・パーティーズ」を初めて聴いたときには心が浮き立ちました。昔のバウハウスが戻ってきたように感じたんです。キャッチーなメロディー、地の底から這いあがるようなピーター・マーフィーのボーカル。カッコいい曲です。

 ところが、マーフィーはこの頃病のせいで調子がよくありませんでした。そのため、本作品ではかなりの部分がマーフィー抜きでの制作になってしまったとのことです。曲の数も足りず、昔作った曲を引っ張り出してきたりしています。「シーズ・イン・パーティーズ」もその一つです。

 マーフィーの不在を感じるのはやはり「フー・キルド・ミスター・ムーンライト」と 「スライス・オブ・ライフ」でしょう。それぞれデヴィッドJ、ダニエル・アッシュがリード・ボーカルをとっています。こんなことはもちろんこれまでありませんでした。

 これらの曲はボーカルが違うというだけではなく、サウンド自体も以前のバウハウスにはあまり見られないアコースティックを基調としたものです。それはそれで別の意味でゴシックを感じたりするのでやはりバウハウスらしいといえば言えるのですが。

 中世のフォークダンスのようなとも言われる「キング・ヴォルケイノ」や、初期の曲かなと思わせる「ハネムーン・クルーン」、アコースティック・ギターが映える美しい「キングダム・カミング」、バウハウスらしいこれぞゴシックなタイトル曲とかなりバラエティー豊かです。

 制作時点でバンドとして十全な形でなかったことから、寄せ集め的な作品を余儀なくさせたということなのでしょうが、個々の曲の出来栄えは以前の作品に全くひけを取りません。むしろさまざまな方向性が楽しめるお得なアルバムとすら感じます。

 しかし、バウハウスは本作品を最後に一旦解散してしまいます。アッシュは本作品のアートワークに名を連ねるグレン・キャンプリングとのデュオ、トーンズ・オン・テイルとしてすでに活動していましたが、バウハウス解散後はそこにケヴィン・ハスキンスも合流します。

 さらにその後グレン抜き、デヴィッドJ入り、要するにバウハウスの3人でラヴ&ロケッツを結成して大成功を収めます。一方のマーフィーはジャパンのミック・カーンとのダリズ・カーやソロとして活動を続けていきます。結局、本作品の制作時の二組が残るわけです。

 ところで本作品の最後の曲「ホープ」がいいです。バウハウス解散の未来を知っているからというばかりではなく、明るいトーンのギターとベースを背景にコーラスで歌われる希望の曲です。ゴシックの夜が明けて新しい時代が始まる。最後までかっこいいバウハウスです。

Burning From The Inside / Bauhaus (1983 Beggars Banquet)