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 ジョイ・ディヴィジョンは1980年5月18日にカリスマ的なリード・シンガーのイアン・カーティスが自死するという悲劇によってバンド活動に突然の終止符が打たれました。わずか足掛け4年の活動でしたが、この悲劇とともにバンドは皮肉なことに永遠の命を得ました。

 さらに残されたメンバーがニュー・オーダーとして商業的にも大成功をおさめたことは、ジョイ・ディヴィジョンの神格化に一層の拍車をかけたものと思います。後にニルヴァーナが同じような道のりをたどることになるとは、歴史は繰り返すというのは本当ですね。

 ジョイ・ディヴィジョンは英国ニュー・ウェイブ・シーンの重要なレーベル、ファクトリー・レコードの看板アーティストでもありました。ジョイ・ディヴィジョンあってのファクトリーですから、後のドキュメンタリー「24アワー・ピープル」でも彼らの逸話が重要な部分を占めていました。

 彼らが残した音源の中心はもちろん2枚のスタジオ・アルバムですけれども、シングル盤やコンピレーションへの提供曲などアルバム未収録曲もさほど多くはありませんけれども存在します。本作品はその未収録曲を集めた編集盤です。

 けしてベスト・アルバムではなく、ジョイ・ディヴィジョンの残した音源を網羅することを目的とした丁寧な編集がなされています。「サブスタンス1977-1980」と題されたアルバムは当初のLPからCD、さらにCDリマスター版へと進化を遂げていきます。

 当初LPの10曲に対し、CD化に際して7曲、リマスター時にさらに2曲が追加されて結局全19曲です。ただあと3曲残っています。そのうち2曲はボックス・セットには含まれていましたから、やればできるはずです。もうひと頑張りがほしかった。

 アルバムはそういう性格ですから、まさに寄せ集めです。しかももともと厳密な時系列にはなっていない上に曲が追加される都度、後ろに伸びていくので、アルバムとしてのまとまりはありません。そこがまたジョイ・ディヴィジョンの悲劇を際立たせているようで面白いです。

 アルバム収録曲のうち最も古いのは1978年6月発表のEP「アイデアル・フォー・リビング」からの曲です。元のバンド名を冠した「ワルシャワ」から始まる各楽曲は彼らのサウンドがパンクそのものであったことが分かります。

 そんな彼らも半年後にはマーティン・ハネットのプロデュースによって、アイデアを形にするすべを得ます。「ファクトリー・サンプル」収録の「デジタル」と「グラス」がそれです。以降の彼らの躍進ぶりには目を見張るものがあります。その過程が楽しめるのが本作です。

 アルバムのハイライトはもちろん有名なシングル3曲「トランスミッション」、「アトモスフィア」、そして代表作「ラヴ・ウィル・ティア・アス・アパート」です。どこかうつろなカーティスのボーカルが♪愛が僕たちを引き裂く♪と歌う心をえぐる名曲です。

 ジョイ・ディヴィジョンはカーティスにばかり注目が集まりますが、バーナード・サムナー、スティーヴン・モリス、ピーター・フックのそれぞれ独創的な演奏があってのバンドです。初期からの変遷をたどっているとそのことがよく分かります。いろいろ発見のあるアルバムです。

Substance / Joy Division (1988 Factory)