クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル、CCRの7作目のスタジオ・アルバムです。前作から1年半近くと、彼らのアルバム発表ペースからすれば恐ろしく長い時間がかかっています。最後のアルバムですから、何かと時間がかかってしまったということでしょう。

 何かと評判の悪いアルバムですけれども、ジャケットは素晴らしいです。色合いといい、女の子の姿を中心としたデザインは秀逸です。ちょっと「レ・ミゼラブル」を思わせる、いろいろと語りかけてくる最高のジャケットだと思います。

 タイトルは「マルディ・グラ」、ニューオーリンズで開かれる世界で最も有名なカーニバルのひとつです。ニューオーリンズは言うまでもなくアメリカ音楽のルーツを探訪すれば必ず行き着くディープ南部の町です。CCRの音楽の旅はとうとうニューオーリンズに行き着きました。

 とはいえ、本作品のサウンドにニュー・オーリンズを感じさせるところはほとんどありません。ベイエリア出身の彼らの憧れを表したものと考えてよいのでしょう。ルーツ音楽を心の支えにしてきたCCRらしい幕切れの粋な演出です。

 前作発表後にトム・フォガティが脱退して、ついに同級生3人のバンドに戻ってしまいました。しかし、同級生3人のうちジョン・フォガティが突出するという状況はなかなか難しいものです。ベースのステュ・クックとドラムのダグ・クリフォードにはとても面白くないことでしょう。

 バンド内の確執を何とか解消すべく、本作品ではこれまでにない試みとして、ステュとダグの二人も曲作りとボーカルを担当しました。結果、ジョンが3曲、ステュが3曲、ダグが2曲、ステュとダグのコンビが1曲、ジョンが歌うカバー曲が1曲という超民主主義的構成です。

 ただし、みんなで仲良くというわけでもなく、ジョンは二人の曲に積極的な貢献をした様子がありません。やれるものならやってみろ的な対応だったようです。バンドの終焉も当然視野に入っていたことでしょう。バンドの最後というのはなかなか難しいものです。

 そんなわけですから、これまでのCCRのアルバムとは一味違います。ジョンなどは本作品をCCR作品と認めないと発言してもいます。しかし、アルバムは彼らの水準からすればものたりないとはいえ全米12位の大ヒットです。決してひどいアルバムではありません。

 もともと期待値が低いからかもしれませんが、ステュとダグの曲と歌はなかなかのものです。ジョンの迫力はもちろんありませんが、そこそこかっこいい落ち着いたポップなロックを聴かせてくれます。ステュの「ドア・トゥ・ドア」はコンサートの定番にもなりましたし。

 ジョンはカントリー風味濃厚な「ルッキン・フォー・ア・リーズン」、重めの名曲「サムデイ・ネヴァー・カムズ」に、かつてのCCRらしいスピード感あふれる「スウィート・ヒッチハイカー」、これまたカントリー全開の「ハロー・メリー・ルー」とさすがの安定感です。

 30分にも満たないこのアルバムが偉大なバンドCCRの最終作品というのは少し寂しい気がします。欠落を埋めるべく、ここからは「クリーデンス・ゴールド」を皮切りにベスト盤が乱発されていきます。みんながCCRロスに陥ったのでした。

Mardi Gras / Creedence Clearwater Revival (1972 Fantasy)