クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル、CCRのアルバム発表ペースの早いこと早いこと。アルバム・デビュー前10年間の鬱屈を晴らさんがごとくです。本作品は前作からわずか3か月で発表されたCCRの四作目です。

 そんなに急いで出した背景には、チャートから落ちたらお終いだというジョン・フォガティの強迫観念があったといいます。一方、ドラムのダグ・クリフォードは「それがみんなにいい音楽をたくさん聴いてもらう最善の方法なんだ」と泰然と構えています。

 本作品のタイトルは「ウィリー・アンド・ザ・プア・ボーイズ」です。ビートルズのサージェント・ペッパーズに触発されたのか、架空のバンドがコンセプトになっています。ジャケットに写っている通り、このバンドはいわゆるジャグ・バンドです。

 ジャグ・バンドは1920年代半ばから米国南部で流行した黒人のバンド・スタイルです。米国ポピュラー音楽のルーツに自覚的なCCRならではの選択だといえます。もっともバンド名は「くまのプーさん」、ウィニー・ザ・プーからとったそうですが。

 今でこそ、ジャグ・バンドといっても話は通じますが、この当時の日本ではそんな話は通用しません。というわけで、邦題は「クリーデンス・ロカビリー・リバイバル」とされました。いろいろ間違っていますが、米国の昔のポピュラー音楽への懐古という点だけは合っています。

 さて、わずか3か月で制作された本作ですが、前作同様に極めて充実した作品です。シングル・カットが少なかったために、チャート的には前作に及びませんでしたが、どうどう全米3位を記録しています。CCRの人気ぶりが分かります。

 本作品の先行シングルは全米3位のヒットとなった「ダウン・バイ・ザ・コーナー」です。B面は同様に強力な曲「フォーチュネイト・サン」で、こちらもB面ながら14位となるヒットを記録しました。社会風刺の効いた力強い曲です。

 アルバムは面白い構成になっています。A面1曲目はシングル曲、2曲目がロカビリー・タッチの軽めの曲、3曲目に1930年代の黒人フォーク歌手レッド・ベリーのカバー曲、4曲目にインタールード的なインスト曲、5曲目は長尺のブルージーな曲です。

 B面の5曲もこれと同じ構成です。それぞれに対応する曲が置かれているわけで、アルバムのドラマ性を高めているように思います。対応するB面のカバー曲は同じレッド・ベリーの「ミッドナイト・スペシャル」で、この曲が本作の中心にある気がします。

 元はフォーク・ソングですけれども、もちろんジョンの手にかかると力強いロック・モード全開となります。ルーツに回帰しながらもしっかりとCCRの個性を刻印していく手腕は見事です。私はこの曲はCCRのオリジナルだとばかり思っていました。

 シングル・ヒット曲が少ないだけに、かえってCCRの土臭さい魅力が増しており、CCRの最高傑作に本作品を挙げる人が多いのもよく分かります。最後の「エフィジー」はジミヘンの「ヘイ・ジョー」とルーツを同じくする曲だそうです。ロックが最も幸せだった時代でした。

Willy And The Poor Boys / Creedence Clearwater Revival (1969 Fantasy)