コロンビアの注目のアーティスト、Jバルヴィンの大傑作「ヴィブラス」以来のアルバムです。題して「コロレス」、スペイン語で「色」という意味です。全10曲すべてに色の名前が付けられています。こういう時には邦題も添えればよいのに、なぜかありません。

 というわけで私が付けます。曲順に「アマリジョ」が黄色、「アスル」青、「ロホ」赤、「ロサ」桃色、「モラド」紫、「ベルデ」緑、「ネグロ」黒、「グリス」虹色、「アルコイーリス」灰色、「ブランコ」白となります。とても潔い曲名です。まさに「コロレス」です。

 このコンセプトにこの上なく寄り添っているのがジャケットです。一目で分かります。世界的なアーティスト村上隆がジャケット、ブックレットを始めとするアートワークを手掛けています。原色使いの村上のアートワークはまさにコロレスの世界です。

 容易に想像できる通り、各楽曲はタイトルにつけられた色名とシンクロしています。「たとえば”ロホ”(赤)には情熱や感情が溢れているけど、”ネグロ”(黒)ではもっとストリートなノリで」などとバルヴィンは説明しています。ある種のコンセプト・アルバムです。

 MVも各楽曲の色が全開です。サウンドはレゲエとヒップホップを融合させた、いわゆるレゲトン・スタイルで一貫しています。少し哀愁を帯びたリズムが素晴らしいです。さすがに旬のアーティストは音が生きていて、幸せな時間が過ぎていきます。

 バルヴィンのサウンドはちょっと聴いただけでも耳を奪います。レーベルの形容は「2019年世界で最もSHAZAMされたのはこのオトコ!」です。SHAZAMは流れている音楽の曲名とアーティストを教えてくれるスマホのソフトです。

 バルヴィンの前作は大ヒットしていますが、やはりコロンビアのアーティストですから、どうしても知名度が劣る。しかし、そのサウンドはどうしても気になってしまう。誰だろうと誰もが思う。そんなアーティストの代表格がこのJバルヴィンということになるのでしょう。

 本作品の各楽曲は2019年11月からほぼ全曲が順番にシングル・カットされています。というか配信されています。アルバム自体の発表は2020年3月のことでした。コロナ禍で発売が危ぶまれましたが、何と一日早く配信が開始されました。

 「こんな状況下だけに予定通りにアルバムをリリースしたものかどうか、ギリギリまで迷っていたよ。でも最終的に決断を下したのは、世界が今このアルバムを必要としているからなんだ」とバルヴィンの「真摯な気持ち」が伝わってきます。かっこいいです。

 本作品にフィーチャーされているアーティストは、プロデュースと曲作りにも関わっているコロンビアの盟友スカイことアレハンドロ・ラミレス、ナイジェリア人シンガー・ソングライターのMr.イージーの二人です。その他に数多くのゲストが参加していますが、クレジットはありません。

 わずか30分弱しかないところが玉に瑕ですけれども、とても素敵なアルバムです。米国のラテン・チャートでは2位、メイン・チャートでも15位となるヒットを記録しており、世界がこのアルバムを必要としていたというのは大げさではありません。私は待ってました。

Colores / J. Balvin (2020 Universal)