明和電機を知ったのは、ご多分に漏れず、テレビ東京で放送していた「タモリの音楽は世界だ」でした。1995年から翌年にかけて放送されていた同番組になぜかレギュラー出演していたへんてこりんなアートユニットが明和電機でした。

 アートユニットらしからぬ名前の明和電機は1993年5月に土佐正道、信道の兄弟によって結成されました。名前は実家が営んでいたことがあるという電気部品メーカーからとっています。正道が代表取締役社長、信道が代表取締役副社長とあくまで会社を模しています。

 結成の翌年には早くも新製品発表会として展覧会を行ったり、その翌年には「祝新商品発売記念デモ[日本公演]」と題するライブを全国で行ったりと大活躍しています。さらに凄いのは現在に至るも継続的に活動を続けていることです。アートは強いです。

 彼らの名前を一躍有名にしたのはツクバ・シリーズと称するさまざまなオリジナル楽器群でしたが、私の印象に残っているのは魚骨型電気コード、魚コードです。意味があるようでない飄々としたユーモラスなアート作品でした。

 本作品は明和電機が2000年になって発表した6枚目となるミニアルバムです。アルバム・タイトルにもなっている主人公のサバオは「13週目の胎児の顔のピストル型腹話術人形」で、「引き金を引くとアゴが動く」優れものです。

 このアルバムはサバオと副社長によるボーカル・アルバムです。サバオ君は腹話術人形らしい声で可愛らしく歌います。誰かに似ていると思ったのですが、それはお笑い芸人の小梅太夫でした。ちょっと無理した感じの歌い方がなかなか味わい深いです。

 最初の曲は自己紹介ソング「サバオの歌DX」です。司会をIBMの音声認識ソフトが担当し、♪かわいいボク サバちゃん♪が唄います。ホーン・アレンジは社長の土佐正道ですが、それ以外の演奏はすべて副社長が担当している模様です。

 続く「一番ステキな体で行こう」はちょっぴりファンキーな曲で、間奏にはYMOの「アブサリュート・エゴ・ダンス」が引用されています。明和電機の音楽活動にはYMOの影が感じられるなと思っていたので、この引用には膝を打ちました。

 続いてオルゴールの調べによるドヴォルザークの「スラブ舞曲No10」を短くはさんで、ユーリズミックスの名曲中の名曲「スウィート・ドリームズ」に日本語詞をつけた「ママは試験管」が出てきます。ツクバ山麓こども合唱団によるドローン合唱が雰囲気抜群です。

 これまたYMOの「増殖」を思わせるギャグ・スケッチを含む「サバオちゃんの絵描き歌」で子どもたちと歌った後、最後に美しい童謡っぽいサウンドの「テンク城のお姫さま」で幕を閉じる。さくっと16分程度の楽しいミニアルバムです。

 明和電機の音楽活動は幅広いアート活動のほんの一部ですけれども、いわゆる音楽シーンからは超然としていて、とても自由です。オリジナルのツクバ楽器を含めたアコースティックな響きと電子音が同居する音楽劇場は確かにアートです。

SAVAO / Maywa Denki (2000 徳間ジャパン)