メンバーが入れ替わってもしっかりと毎年アルバムを発表するフリートウッド・マックの5作目のアルバム「フューチャー・ゲーム」です。またまたジャケットからはヒッピーの匂いがします。ファミリーを大事にするラヴ・アンド・ピースの時代です。

 前作発表後、オリジナル・メンバーだったジェレミー・スペンサーがバンドを去りました。代わりに加入したのが、米国人ボブ・ウェルチです。彼はそれまで米国カリフォルニアにてさまざまなR&Bバンドでプレイしてきた人だと紹介されています。

 さらにピーター・グリーンの後任として加入したクリスティン・マクヴィーも本作からは本格的にアルバム作りに参加しています。残ったフロントマンはダニー・カーワンだけとなりました。ミック・フリートウッド&ジョン・マクヴィーはもちろん健在です。

 このバンドの面白いところはオリジナルから変わらないリズム隊をバックに、フロントを務めるミュージシャンがころころ変わることです。しかも、バンドのアイデンティティというよりも、フロントマンそれぞれの個性を尊重するサウンド作りをしています。

 本作でも、カーワンが3曲、クリスティンが2曲、新加入のボブ・ウェルチが2曲、全員でのジャム演奏が1曲の構成となっており、それぞれが個性を主張しています。さながらフリートウッド&マックをバックに三人のソロ・アーティストが演奏しているようなものです。

 カーワンはすでに3枚目のアルバムとなり、柔らかいギター・サウンドを配した少しポップな曲調がこれまでのアルバムと地続きでありながら、より深みをましています。シングル・カットされた「サンズ・オブ・タイム」などはヒットには恵まれませんでしたがとてもいい曲です。

 クリスティンは後に大成功するマックでも中心になって活躍するだけあって、ここで彼女がもたらしたサウンドは、後期のマックと素直につながる作風です。やはりピアノのサウンドが前面に出てきたことで、ぐっと幅が広がった気がします。

 ウェルチは英国三大ブルース・ロック・バンドだったフリートウッド・マックに初めて加入したアメリカ人ですし、R&Bやジャズを演奏してきた人ですから、かなりマック・サウンドに変化をもたらしています。彼が作った「フューチャー・ゲーム」はアルバム・タイトルになる大作です。

 同じく三大ブルース・バンドにいたクリスティンはともかく、もともとポップな持ち味だったカーワンに加えて、米国からブルース臭の薄いウェルチが加入したことで、三大ブルース・バンドの面影はかなりの程度払拭され、とてもカラフルなロック・バンドになりました。

 そんなサウンドですから、ピーター・グリーン時代に凝り固まった英国ではさっぱり売れず、チャート入りすらしていません。しかし、米国ではそれなりに人気を博し、2000年にはゴールド・ディスクに輝くという地味ながら天晴な売れ方をしています。

 三人の個性が際立ち、さらには全員でのジャム・セッションでバンドらしさも見せるという、とても嬉しいアルバムです。細部にこだわった丁寧な演奏によるサウンドは、大西洋をまたにかけてふわふわきらきらと輝いています。

Future Games / Fleetwood Mac (1971 Reprise)