B-DASHのメジャー・デビュー曲「ちょ」にはにんまりさせられました。彼ら独自の英語でもない日本語でもない「適当アドリブめちゃくちゃ語」による歌詞をのせた生きのいいパンク・サウンドは若々しくて身体が浮き立つようでした。

 B-DASHは1999年にインディーズからシングル・デビューしています。じわじわ人気を広げ、2001年には同じくインディーズからアルバムを発表するとこれがオリコン・チャートでトップ10に入るヒットを記録しました。そしてメジャーから「ちょ」でデビューとなります。

 彼らはその後順調に活動を続け、この作品は2008年に発表された5枚目のアルバム「パンパカパン」です。結成から数えるとすでに10年を経過しているにもかかわらず、初期のころからその若々しいサウンドは変わりません。

 ジャンルから言えば、これはもうパンクでしょう。それも青春パンク。ボーカルとギターのゴンゴン、ベースのタナマン、ドラムのアラセによるスリー・ピース・バンドで、これ以上ないストレートなパンク・サウンドを展開しています。まっすぐなことこの上ありません。

 本作品は前作に引き続いてプロデューサーに屋敷豪太を迎えてパワーアップを図っています。ゲストとしては同じくパンクなハイロウズにいた白井幹夫がピアノで1曲だけ参加するという心憎い趣向が凝らされていますが、基本は三人だけ。潔いです。

 ボーカルはゴンゴンですけれども、三人によるコーラスが青春を感じさせて大変気持ちが良いです。最初から最後まで突っ走る、変なギミックはなにもなく、曲調はさまざまですけれども、いずれもパンクの範疇から大きく逸脱するものはありません。

 彼らの最大の特徴は「適当アドリブめちゃくちゃ語」と言われる意味不明の歌詞にあります。マグマのコバイア語やルインズの摩崖仏語など新たな言語を創り出そうとする試みはありますが、B-DASHの言葉はそういう世界を目指していません。

 誰しも覚えがあることでしょう。英語を学び始めたばかりの中学時代、聴き始めた洋楽に合わせて独りで熱唱したことを。その時に口をついて出た歌詞がB-DASHの「適当アドリブめちゃくちゃ語」です。耳に馴染むんだ、これが。

 本作品では3分の2くらいがその適当語で歌われています。「ぺ様」とか「なんでやねん」がそれにあたります。一方で、ちゃんと意味の通る歌詞で歌われる曲も「風」や「流れ星」など数曲あります。こだわりなく折衷するところもB-DASHらしくていいです。

 なぜか適当語の曲の方が歌詞カードを熱心に見てしまいます。そこには無理やり漢字まじりで歌詞が書かれているんです。眺めているだけでウキウキしますし、何とか歌詞カード通りに歌いこなしてみたいというちょっとずれた衝動すら感じます。

 サウンドはストレートなパンクをしっかり演奏していて確かな力量を感じます。とにかく気持ちよくロックしていて、さわやかなことこの上ありません。ブックレットにある屈託のない笑顔を浮かべる自然体の三人の写真を見ていると本当に幸せになれます。いいアルバムです。

B-Dash / Panpakapan (2006 PQ)

アルバム収録曲ではないですが、