ルインズは日本を代表する超絶ドラマー、吉田達也によって1985年に結成されました。当初はドラム、ベース、ギターの3ピース・バンドを予定していましたが、ギタリストがリハーサルに来なかったためにドラムとベースのデュオになりました。

 この形態は後にフリクションも採用しますが、ルインズの方が早いです。何とも刺激的なデュオです。3人の予定が2人でなんとかなったのですから、1人になっても問題なかろうと思ったのか、本作は吉田一人になったルインズ・アローンのデビュー作です。

 2005年の夏から吉田はソロでルインズの音楽を演奏し始めます。ただし、その当時は場所場所でゲストにベーシストを迎えるという「ベシスト・ウォンティッド・ツアー」でした。吉田はルインズ・アローンとして活動を始めるようになったのはそれ以降のことです。

 吉田は精力的に他のバンド活動も行っていますから、特に間が開いたというわけではありませんけれども、ルインズの最後のアルバムから10年近くを経て、吉田は21世紀仕様のルインズを世に問うべく、ようやくセルフタイトルの本作を発表しました。

 ソロには違いありませんが、ドラムだけのアルバムではありません。あくまでルインズの作品でもあり、ドラムとボーカル以外はサンプラーなどを使って吉田が一人で制作しています。ボーナス・トラックも含めて23曲、マシンガンのように激しい音楽が詰まっています。

 ルインズ・アローンではルインズの過去作品が演奏されており、本作においても名作「パラシュトム」の曲名が見つかります。サンプラーで対応するわけですから、ルインズの過去作品が下敷きになるのも当然といえば当然です。

 ルインズのファンにはお馴染みのメドレー作品の再演である「プログロック」と「ハードロック」もボートラ収録されています。ほんの2分強の間にプログレ、ハード・ロックの定番曲のサビがこれでもかこれでもかと詰まっています。曲当てをしながら友達と聴くと楽しそうです。

 ボーカルは吉田のレーベル名に採用されている摩崖仏をとって摩崖仏語とも称される意味不明の人工語です。マグマのコバイア語ほど整備されていませんが、超絶ドラミングと響き合ってかっこいいです。もちろん吉田が歌っています。

 矢継ぎ早に繰り出される変拍子と鋭角的に切れ込む石のようなサウンドはまるでシンクラヴィア作品のようです。揺れやゆらぎによって体臭がふんぷんと匂ってくるサウンドではなく、ジャストな機械が奏でるようなサウンドで、そこが大きな魅力になっています。

 ドラマーの作品なのに、低音が強調されるわけではなく、そこもシンクラヴィアを思わせる所以です。ボーカルまで生身の肉体とは一線を画して超然としています。超絶の肉体技なのに、それが極まると機械っぽくなるというのも面白いものです。

 吉田は石の写真を撮り続ける写真家でもあって、その作品はジャケットに反映されています。これはヒンズー寺院でしょうか。石のレリーフの顔に自身をモーフィングしたジャケットにはくすっと笑ってしまいます。下半身もあればもっとよかったかもしれませんね。

Ruins Alone / Ruins Alone (2011 Skin Graft)