うーん。しばらく唸ってしまいました。こんなことがあるんですね。本作は「ヴァージン時代、1974年に発表されたエドガー・フローゼの記念すべき1stソロ・アルバム」の「リメイク版」です。ちゃんと帯に書いてあるんですね。「リメイク版」。

 普通、そんなこと気にしないじゃないですか。紙ジャケで再発されたら。しかも「タンジェリン・ドリームを40年以上の長きに渡り維持してきたジャーマン・プログレッシヴ・ロック界の巨人、エドガー・フローゼ」「人気のソロ作品を日本初CD化」と書いてあります。

 たしかにこの書き方も間違いじゃない。ただ、紙ジャケで再発されたらオリジナルだと思うじゃないですか。まあジャケットも違いますし、「リメイク版」と書いてあるので、勝手に思い込んだ私が悪いと言われれば返す言葉もないのですが。

 ともあれ、これはタンジェリン・ドリームの中心人物エドガー・フローゼが1974年に初めて発表したソロ・アルバム「アクア」、をリメイクしたアルバムです。リマスターではなくリメイク。リミックスというよりもリメイクという言葉が適当です。

 とはいえ、私が「アクア」を聴いたのははるか昔の話でした。恥ずかしながら、このアルバムを聴いて、何ら違和感を感じることはありませんでした。こんな感じだったなあ、などと思ってしまったことも確かです。驚きはオリジナルと聴き比べた時にやってきました。

 たしかに曲は「アクア」そのものなのですが、最初から2005年仕様のビートが追加されています。細かく聴くとまだまだ足されていそうです。ただ、引かれている訳ではなさそうで、盟友クリス・フランケの客演もそのまま使われています。

 また、オリジナルの全4曲に加えてオリジナル最後の曲「アップランド」の姉妹曲「アップランド・ダウン」が追加されて全部で5曲になっています。ボーナス・トラックです。リメイク版にボーナス・トラックというのも不思議な感覚ではあります。

 「アクア」はタンジェリン・ドリームのコマーシャルなブレイク作となった「フェードラ」と並行して制作されています。そのため、コンパニオン・アルバムだと捉えられることが多く、実際、サウンドも親和性が高いです。「フェードラ」に収まりきらない興奮がこちらに溢れています。

 タイトル通り、水の音で始まる「アクア」の元ジャケットは氷をあしらった一貫性のあるものでした。しかし、2005の方はフローゼの「ズーム・オ・グラフィック」シリーズから採られており、あまり脈絡があるようにも思えません。いかにも初歩のCG習作っぽい。

 文句を言いつつも、大そう気持ちの良いサウンドが流れてくるので、これはこれでありかなと思うようになりました。2005年に最新機材で当時のことを思い出しながら、丁寧にビートやらなにやらを足していく作業は本人にとって楽しい作業だったに違いありません。

 ドイツから英国にわたってまだ挑戦者の立場にあった当時と、功成り名を遂げて大御所となった2005年との間を埋めようとするフローゼ自身の自分探しプロジェクトでもあったのでしょう。購入する際は気を付けなければなりませんが、これはこれで面白いです。

Aqua 2005 / Edgar Froese (2005 Eastgate)

オリジナルの方