伝説のレコードがついに再発されました。1981年のクリスマス・イブに発表されたザ・スターリンのデビュー・アルバムです。予定の1000枚では足りず、急遽追加した1000枚もあっという間に完売したインディーズ界最初のヒット作品です。

 私は自慢じゃありませんが、新宿のディスク・ユニオンにて本作品を予約して手に入れました。「スターリニズム」が良かったのでニュースに接してこれは買わねばならないと早々に予約していたのでした。デビュー作を予約して手に入れたのはスターリンと松田聖子だけです。

 しかし、その後、アナログ・レコードをほぼすべて処分した際に、「トラッシュ」も一緒に処分してしまいました。売値は2万円でした。数百枚も売り渡した中で購入価格よりも高くなったのはこれとゼルダのソノシートくらいなものでした。しまったと思った時は後の祭りでした。

 その後、インディーズ系でも多くの作品がCDで復刻される中、このアルバムだけは一向に再発される気配がありませんでした。ネットで調べてみるとさまざまな説が飛び交っており、真相は藪の中です。ややこしそうですが、ともかく再発を喜びましょう。

 「トラッシュ」はザ・スターリンが設立したインディー・レーベル、ポリティカル・レコードからリリースされました。販売にあたったのは音楽評論家の森脇美喜夫が設立したシティ・ロッカー・レコードでした。どちらも設立して間がなく、まだ手作り感満載でした。

 アルバムはA面がスタジオ録音、B面がライブ録音です。ライブのほとんどは、この当時、パンク勢に場を提供していた法政大学でのステージで、2曲のみ京都のライブハウス磔磔です。全部で20曲入りといういかにもパンクな仕様でした。

 この時のザ・スターリンは遠藤ミチロウ、ベースの晋太郎、ドラムのイヌイジュン、ギターは金子アツシの後任となるTAMの四人組でした。ステージから生ごみやら豚の臓物やらを投げ込む過激なパフォーマンスで話題を集めていた頃です。

 楽曲はシングルやミニ・アルバムからの既発曲、後に再録音されて発表する曲などが入り乱れており、いずれもスピード感あふれるパンクな演奏になっています。この頃のザ・スターリンはセックス・ピストルズやコントーションズのようなパンクらしいパンクでした。

 後に再録される曲としては「ロマンチスト」となる「主義者(イスト)」、「ワルシャワの幻想」となる「メシ喰わせる」、鬼気迫る「溺愛」などが挙げられます。「メシ喰わせろ」は言うまでもなくINUの「メシ喰うな」のアンサーソングです。

 伝説のアルバムとなったこともあり、本作はインディーズ史上最高傑作とされることもあります。遠藤自身はかつてはっきり不快感を表明していました。「ストップ・ジャップ」、「虫」、「フィッシュ・イン」と続く自信作を聴いてくれ、ということです。

 私もミチロウさんの意見に賛成です。ただ、本作にはインディーズらしい手作りパンク感が満載で、良くも悪くもみんなが考える日本のパンクの理想形があることも確かです。あらの目立つところも素敵。熱気あふれた日本のパンクの金字塔であることは間違いありません。

trash* / The Stalin (1981 ポリティカル)