アイドルズは2017年にデビュー・アルバムを発表した英国ブリストル発の5人組ロック・バンドです。ポスト・パンク・バンドと紹介されることが多いですが、英国ではパンク・バンドとされることもあります。いつまで戦後なのか、いつまでポスト・パンクなのか。深遠な問いです。

 ジャンル論争はさておき、アイドルズをパンクと呼ぶ気持ちも、ポスト・パンクと呼ぶ気持ちも両方分かります。ストラングラーズあたりをパンクと呼ぶのかポスト・パンクと呼ぶのか迷うのと同じようなものです。いずれにしてもそっち系のサウンドだということさえ分かれば十分。

 本作品は評価の高かったデビュー・アルバムに気をよくしたバンドが勢いにのって制作したセカンド・アルバムです。「UKチャートの5位を記録し、主要なメディアの大半はアルバムを同年の年間ベスト・アルバムの上位に選出」しました。

 アイヴァー・ノヴェロ・アワードでベスト・アルバム、マーキュリー・プライズにもノミネート、権威あるブリット・アワードでもブレイクスルー・アーティストにノミネートされています。賞にこだわるようなバンドではないと思いますが、彼らを紹介する時には必ず言及されます。

 さらに彼らはマッカビーズやフー・ファイターズのサポートを行ったことが常に特筆されます。中には「フー・ファイターズのサポートアクトにまで登りつめた」とまで書くところも。いくらフー・ファイターズが大物とは言え、サポートアクトに「登りつめ」るっていくら何でも可哀想です。

 ジャケットは結婚披露宴で誰かが酔っぱらって倒れたといった状況を活写した写真です。このロゴといい写真の切り取り方といい、まず時代がよく分かりませんし、悲劇なのか喜劇なのか、喧嘩しているのか心配しているのかも分かりません。不思議なジャケットです。

 5人組の写真を見ると、これがまたおっさんっぽい。演奏している姿はリアルなポスト・パンク時代の写真だと言われてもおかしくない。要するに新しいバンドだという気があまりしません。そこのところが私にはとても心地よいです。

 バンドの編成はジョー・タルボットのボーカル、アダム・デヴォンシャーのベース、マーク・ボーウェンとリー・クラーナンのギター、ジョナサン・ビーヴァスのドラムという典型的なロック編成です。あまり凝った作りではなく、シンプルに5人で奏でるロックです。

 タルボットは、「今回のアルバムでは俺らの音楽を聞いているオーディエンスに隙をみせてみようとしたんだ」と語っています。「このくそったれな世界で勇敢にも笑ってみせるように弱みをみせてもいいんだよっていうね」。彼らはその言葉通りの社会派でもあります。

 移民問題やら階級社会に物申すスタンスは潔く、これまたポスト・パンクないしはパンクと呼びたい気持ちを強く喚起します。武骨なエネルギーに満ちた勢いのあるロック・サウンドが正面から繰り出されてくるので、聴いていて気分が高揚します。

 もちろん録音機材は進歩しているので、サウンドは当然パンク時代とは一線を画しています。ドラムを始め各楽器の音は深いし、リズムもハウス以降の感覚です。その意味での革袋は新しく、そこに盛られる音もしっかり同時代です。パンクの現代展開として面白いです。

Joy As An Act Of Resistance / Idles (2018 Partisan)