フランク・ザッパ先生のデビュー40周年を記念するオーディオ・ドキュメンタリー・シリーズ、プロジェクト/オブジェクトの第一弾は当然のことながら、驚異のデビュー・アルバム「フリーク・アウト」を取り上げました。メイキング・オブで「MOFO」です。

 「MOFO」には二種類あり、こちらは4枚組の豪華盤です。2枚組の普及盤もありますが、悩ましいことに4枚組が2枚組を完全に包摂しているわけではありません。4枚組になくて2枚組にあるという音源がいくつもあります。完全主義者ならば2枚組も買う必要があります。

 4枚組の最初は「フリーク・アウト」のそのものです。この作品は1987年のCD化に際してボブ・ストーンによって一部デジタル・リミックスが施されました。先生の他の作品はオリジナルに修正されているのですが、なぜかこれだけは現在もそちらが一般に流通しています。

 本作品「MOFO」の「フリーク・アウト」は初めてオリジナル・アナログ盤のステレオ・ミックスを収録しました。快挙です。ボブのリミックスが3曲、4枚目に収録されているので、違いを確認することができますが、私はオリジナルの方が好きです。とげとげしていて刺さります。

 2枚目の中心はモノ・ミックスです。先生はデビュー・アルバム制作時からスタジオに自身のテープレコーダーを持ち込んですべてを録音していました。生涯を通じて録音し続けていた人ですが、まさかデビュー・アルバムの時からとは思いませんでした。

 ここにはマスター・テイクも含まれていますけれども、それも先生が自身のテレコに録音した音源が使われています。中心は、歌入れの没テイク、歌入れ前のベーシック・トラックですが、一部スタジオ機材で録音された別テイクも含まれています。

 3枚目は伝説の深夜セッションが中心です。アルバムで言えば2枚目のA面半分とB面全部を占めるアヴァンギャルドな曲は3月22日の深夜に録音されました。この時、スタジオには500ドルで借りた機材と多数のフリーク・アウトした人々が集いました。

 中にはロスの顔役キム・フォーリーや、モンティ・パイソンのテリー・ギリアム、スリー・ドッグ・ナイトのダニー・ハットンとコリー・ウェルズなどの有名人も混ざっています。プロデューサーのトム・ウィルソンはLSDをきめていて、スタジオは野放し状態でした。

 先生の指揮により皆が変な声を出したり、いろいろなパーカッションが重なったり、数時間に及ぶスタジオ三昧です。これを編集してオリジナルができたのかと思うと感動します。しかし、実は先生の編集は道半ばなのに、レーベルは強引に打ち切って発売したのだそうです。

 4枚目はベーシック・トラックの1970年リミックス、先のボブによるミックス、シングル用のミックスとインタビューが収録されています。ベーシック・トラックに参加したメンバー以外の演奏者がどの楽器を演奏したのかも今回すべて明らかにされています。

 特に4枚目などはマニア向けですが、フランク・ザッパ先生の原点となった「フリーク・アウト」をさまざまな角度から楽しめるのは素晴らしいことです。改めて聴いてみて、私はいかに先生の音楽が好きなのかがよく分かりました。どの断片も耳にしっくりきます。

The MOFO Project/Object / Frank Zappa (2006 Zappa)