かつて東京タワーには蝋人形館がありました。惜しくも2013年に閉館してしまいましたが、東京のちょっと怪しい名所として人気が高く、私も何度も通ったものです。そこには、もちろん定番の拷問シーンに加えて、有名なスターたちが所狭しとならんでいました。

 その中にマニ・ノイマイヤーの蝋人形も存在していました。ジャーマン・プログレやらフランク・ザッパやらヘビー・メタル勢やらかなりマニアックなコーナーでした。同じフロアにはそうしたアーティストのレコードを売るお店もありました。懐かしい。

 マニ・ノイマイヤーの初来日は1996年のことで、蝋人形館に自分の人形があることを知って大そう喜んだそうです。その時から、彼の日本とのつながりは極めて太くなり、以降、何度も来日することになります。非常階段やらゆらゆら帝国とのコラボなどもあります。

 というのもノイマイヤーは日本人えつこさんと結婚しているんです。このえつこさんは1970年代前半頃、フリクションのレックやチコヒゲも参加していたアバンギャルド音楽集団○△□のメンバーでもあった人です。

 このアルバムは、そのノイマイヤー氏が御年79歳にして沖縄で制作したアルバムです。題して「ガラパゴス」、アーティスト名は「マニ・ノイマイヤー&オキナワフレンズ」です。えつこさんは写真などでしっかり参加しています。仲睦まじいご様子です。

 オキナワフレンズは4人、まずはヘリパッド問題にゆれる「高江の兄貴、岳ニイニイ」こと、石原岳。彼は「静寂、微音のライブから轟音のライブまで、アンビエントからノイズまで」カバーするギタリストです。坂田明などとのセッションもあります。
 
 そして高円寺百景に参加していたベースの坂元健吾、沖縄のバンド、マルチーズロックからギタリストのホールズ、ベーシストの上地Gacha一也の二人です。ノイマイヤーのドラムとパーカッションを中央に、ギターとベースを左右に一組ずつ配置する面白い編成です。

 クレジットを見ると、録音場所は浦添にあるグルーヴ沖縄、録音日は2019年2月18日一日だけです。この内容を一日で収録するとは、このユニットの充実ぶりは恐ろしいものです。なお発売のグルーヴ・ライン・レコードは英国の同名レーベルとは違うようで正体不明です。

 アルバムはまずタイトル曲で始まります。ここで鳴っているパーカッションはジャケットにはプレート・パーカッションと記載されています。しかし、写真を見ると床に並べた銀のお皿の上で打ち合わせているのはサンゴです。澄んだ高音が美しすぎます。

 このサンゴはその名も「サンゴ・ビーチ」で10分強堪能できます。一方で、「グルーヴ・クラブ・シャッフル」はシャッフル・ビートのロック・スタイルでのバンド演奏、「ゴーヤ・ボーイズ」ではフリー・インプロ系のバリバリの演奏が聴けます。

 御年80歳近くとは思えない力強いドラミングと繊細なサンゴ、南の島を感じる大きなグルーヴを醸し出すオキナワフレンズの演奏、どちらも圧倒的に素晴らしいです。台湾でのライブは大盛況だったようで、ぜひ日本でもお願いしたいところです。

参照:三宅商店HP

Galapagos / Mani Neumeier & Okinawa Friends (2020 Groove Line)