ジャケットを飾っているのは元祖バウハウスのシグネットで、バウハウスの教員だったオスカー・シュレンマーがデザインしたものです。ミニマルで幾何学的で機能的でバウハウスの思想を見事に表しています。これをジャケットに持ってきたところに意気込みを感じます。

 バンドの方のバウハウスは1978年の結成当時バウハウス1919と名乗っており、このドイツのバウハウスに本気で入れ込んでいました。彼らの音楽のスタイルは、彼らなりにバウハウスを解釈したものであったのでしょう。確かにミニマルで幾何学的なサウンドでした。

 参照軸をバウハウスやハリウッドながらベラ・ルゴシを通じてドイツ表現主義、さらにはゴシック時代に置いたことは、彼らが時代を下ってもかっこいいバンドであり続けることができた最大の理由でしょう。隙のないイメージを作り上げることに成功しています。

 バウハウスは1979年にレコード・デビューを果たしましたが、1983年には解散してしまいました。正味4年程度の活動期間です。彼らはヒットチャート的には目立った成績を残していないにもかかわらず、忘れられることもなく、ゴスの元祖として歴史に名を刻んでいます。

 本作品は「1979-1983」と題された通り、バウハウスの全キャリアを網羅したベスト・アルバムです。もともと1985年11月にLP2枚組として発表されましたが、その後、1988年に曲を加えた上でCDを2枚に分けて再発されました。

 手元にあるのはそのLPを復刻した紙ジャケに曲を加えたCD2枚を収めたもので、日本のインペリアル・レコードによる丁寧な仕事です。鳥肌物の四人のモノクロ・ポートレートもしっかり復刻されています。バウハウスの全キャリアを俯瞰する上で大変便利です。

 バウハウスは4枚のアルバムとともに、当時の英国ニュー・ウェイブ・バンドらしく、アルバム未収録の12インチ・シングルを多数発表しています。本作はCD2枚組らしく、アルバムからの名曲選と重要シングル曲及びレア・トラックからなっています。

 デビュー曲「ベラ・ルゴシズ・デッド」はレーベル違いでオリジナル・シングルからの収録はできませんでしたが、代わりにライブ・バージョンが収録されています。それ以外は基本的に全シングル曲が網羅されています。私は「テラー・カップル・キルド・コロネル」が嬉しい。

 彼ら最大のヒットとなったボウイのストレートなカバーで「ジギー・スターダスト」、Tレックスの「テレグラム・サム」、イーノの「サード・アンクル」のカバー3部作ももちろん収録されています。加えて突然の解散のおわびにファン・クラブに配った「サニティ・アサシン」というレア曲も。

 アルバムからの収録は初期のストレートなかっこ良さが味わえる2枚に大きく偏っています。CDを2枚に分けたのも理由がないことではありません。後期の曲を中心とする2枚目には「サトリ」や「クラウズ」など初期でも実験的な曲を寄せているのも意図的でしょう。

 バウハウスは英国ニュー・ウェイブ界隈でも頭抜けてかっこよいイメージが出来上がっていました。そのイメージと四人それぞれがミニマルでクールなサウンドを持ち寄ることで劇的にもなっていくというサウンド面での面白さが何とも不思議な組み合わせでした。

1979-1983 / Bauhaus (1985 Beggars Banquet)