スティーヴ・ライヒ、テリー・ライリー、フィリップ・グラス。言わずと知れたミニマル・ミュージックの巨匠たちですが、もう一人、彼らと常に並べ称されるアーティストがいます。それがラ・モンテ・ヤングです。ただし、ヤングの音源は他の三人に比べると極端に入手困難です。

 私はこれまで長い間、ヤングの作品にレコード店で出会ったことはありませんでした。ところが、このたび2020年になってようやく出会うことができたものですから思わず買ってしまいました。それがこの2枚組アルバムです。今から思うと怪しげでした。

 私はブートレグだけは買うまいと心に決めているのですが、結果として、この作品はどうやら非公式ブートレグらしいです。よく確かめてから買うべきでした。猛省しつつも、もったいないので聴いてしまいました。ヤングの正規盤を何とか探して埋め合わせをしたいと思います。

 本作品はラジオ放送の録音ではないかと言われています。2枚組で全7曲、比較的有名なヤング作品が収録されているものの、すべては「抜粋」とされており、全曲丸ごと収録されている曲はありません。彼の作品は長いので当然といえば当然です。

 1935年生まれのヤングは学生時代にはサックス奏者として名をはせます。エリック・ドルフィーやオーネット・コールマン、ドン・チェリーなどと共演したといいますから大したものです。その後、大学で音楽を勉強すると作曲に専念するようになります。

 ヤングはさまざまな現代音楽や電子音楽、インド古典音楽やガムランなどの影響を受けつつ、独自の音楽を追及し続けます。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケールがヤングに出会って強く影響されたことなどからロック・ファンにもなじみ深いことになっています。

 1枚目は管楽器のオクテットによる1957年の「フォー・ブラス」、実際に家具を使ったらしい1960年の「椅子、テーブル、ベンチなどのためのポエム」、1964年の「デイ・オブ・ジ・アントラー」の3曲です。3曲目はオルガンでしょうが、いずれもずっとドローンが響いています。

 一方、2枚目はもう少しミニマル・ミュージック的なフレーズが出てきます。最初は彼の作品の中でも最も有名ではないかと思われる「ウェル・チューンド・ピアノ」から始まります。これは決して完成することのない即興的なピアノ作品で、5枚組CDになったこともあります。

 次いで「Bフラット・ドリアン・ブルース28th/63」、「アーリー・チューズデイ・モーニング・ブルース」、「ザ・トータス:ヒズ・ドリームズ&ジャーニーズ」と1963年から1966年までの作が登場します。いずれもドローンばかりではなく、いわゆる曲らしい曲です。

 残念ながらラジオ録音らしく、音質はいずれもお世辞にも良いものとは言い難いです。しかし、とにかくヤングの作品がまとまって聴けるのは嬉しいです。特に「B♭ドリアン・ブルース」での吹きまくるサックスは一聴の価値があります。

 ヤングの音楽は、攻撃的なドローンであったり、没入的なミニマル・ミュージックであったり、後の世にその影響を見るのはたやすいことです。ブートレグらしいので決してお勧めはしませんけれども、ヤングの音楽に触れることは強くお勧めしたいです。

Der Zweck Dieser Serie Is Nicht Unterhaltung Volume One / La Monte Young (2003)