もともとはカセット・テープで発表されたオールターナティヴTVのライヴ・アルバムです。3カ所でのライヴ音源が収録されていますが、その間にバンド名がグッド・ミッショナリーズに変わったので、アーティスト名には両者が併記されています。

 アルバムの半分を占めるのは1979年3月18日にグリニッジ・シアターで行われたライヴです。この時はまだオールターナティヴTVでした。問題作「ヴァイビング・アップ・ザ・シナイル・マン」を発表した直後だけに極めてアヴァンギャルドな内容となっています。

 おまけにこの日は対バンのファッションなるバンドが時間をとってしまったため、メイン・アクトのATVの演奏途中で照明が落とされ、PAも切られてしまったとのことです。怒り狂った彼らは機材を壊したりしてステージを下ります。呆然とする観客を後に残して。

 しかし、そうした騒ぎはこのアルバムには収録されていません。そこは録音したグラント・ショウビズがうまいこと編集したのかもしれません。確かに音楽を鑑賞するには無用な話ですし、パンク伝説を無用に助長するだけですから、良い判断だと思います。

 このステージでは、「ヴァイビング・・・」の完全再現がもくろまれましたが、パンクを期待する観客を前に自信をもって演奏することができなかったとの反省がなされました。結果、オールターナティヴTVの名前を捨てることとなります。

 続いて1週間後に行われたリセウムでのライヴが1曲収録されています。このライヴで初めてグッド・ミッショナリーズと名乗ったそうです。バンド・メンバーもマーク・ペリーとドラムとギター担当のデイヴ・ジョージ以外は交代しています。重要人物デニス・バーンズがいません。

 最後の2曲は5月に行われたポップ・グループとのアニマル・インスティンクツ・ツアーからの音源です。このツアーからの曲はグッド・ミッショナリーズ名義で「ファイヤー・フロム・ヘヴン」と題されて別途発表されています。ここにはデニス・バーンズが入っています。

 バンド名は変わりましたけれども、サウンドは地続きです。名前を捨てたことによって、より自信をもった演奏になったように思われます。殺伐とした雰囲気がやや落ち着きました。このツアーではポップ・グループ目当ての客にひどい目にあわされたこともあったようですが。

 グッド・ミッショナリーズは、8月のギグを前にして、マークが逃亡してしまい、マーク抜きのライヴを行います。3日目には酔っぱらって出てきたマークとドラムのヘンリー・バドウスキーが喧嘩になったことで実質的に解散してしまいます。若気の至りです。

 マークはスタジオ・アルバムを制作したかったと後悔しています。確かに無理解な観客のいないスタジオで思う存分に音楽をやっていれば凄いものができたのかもしれません。バンドというものは往々にしてそういうものです。

 本作は「音はロウファイだけれども、歴史的にはハイファイだ」とある通り、ATVのアヴァンギャルド時代を記録した作品として貴重です。バンドがてんでばらばらな方向を向いていながらしっかりまとまるという圧倒的な自由が楽しいです。ポスト・パンクの極北です。

Scars on Sunday / Alternative TV, The Good Missionaries (1979 Fuck Off)

ピール・セッションからの音源です。