マーク・ペリーのオールターナティヴTVによる2019年の作品です。パンク時代からすでに40年が経ちましたが、こうして元気に活動しているのは大変心強いことです。しかも、ここへきてかなり攻めた内容なのが凄いです。

 本作品は2015年の前作発表以降にシングルやEP、あるいはコンピレーションへの提供によって発表された楽曲をまとめたアルバムです。コンピとはいえ、マークも言っている通り、ひとつのまとまったアルバムとして聴かれるべき作品です。

 最初の2曲、「ディス・リトル・ガール」と「アート・スクール・プロジェクト」は2016年発表のシングル、続く「ネガティブ・プリミティブ」と「レベル・プルーフ・グラス」も同じく7インチ・シングルからの収録で、こちらは2017年の発表です。

 続く4曲は2018年のEP「ダーク・プレイセズ」から、「ラジエーター」は「プレゼントリー・アンタイトルド」なるフォース・ダイメンジョンのコンピ提供曲、最新シングル「ウォールズ/ホロウ・ストリーム」、コンピ「ロウ・エクスペクテイション」への「チャイニーズ・バーン」と続きます。

 こうしてみると、曲順はほぼ発表順です。律儀な並べ方でもまとまりのあるアルバムになるわけですから、2016年からこちら4年間のオールターナティヴTVの活動は同じテンションで継続してきたことが分かります。安定した活動が続いていたんです。

 メンバーもプロデューサーを兼ねているデイヴ・モーガンが全曲に登場しています。モーガンは前作もプロデュースしていますから、マークとの付き合いも長くなりました。さらに前作参加のクライヴ・ギブリン、スティーヴ・カーターが前半部分に登場しています。

 安定したメンバーによる安定した活動がもたらしたものは、初期のオールターナティブTVの持っていた実験的な作風の深化です。アシッド・フォーク的になったり、ベーシックなロックンロールに回帰した時期を経てのエクルペリメンタルなサウンドが眩しいです。

 ここではマークはボーカルに加えてシンセサイザーとパーカッションとクレジットされています。トレードマークのギターではありません。ライヴではギターを弾いているようですが、モーガンとともに操るシンセがアルバムでは重要な役割を果たしています。

 そのシンセはクラブ・ミュージック標準のサウンドではなく、ロウファイでアナログなノイズを叩きだしており、パーカッションやギターのサウンドとも自然に融合しています。洗練されないエレクトロニクスがオールターナティヴ精神を際立たせる役割を果たしています。

 とりわけ最新シングルの「ウォールズ」と「ホロウ・ストリーム」では、ほぼモーガンとマークの二人による陰鬱なシンセ・サウンドが展開して心を波立たせます。パンク/ニュー・ウェイブ期のサウンドを彷彿させるおどろおどろしさがいいです。

 サブウェイ・セクトのヴィック・ゴダードが一曲ギターで参加していますし、最近ホワイトハウスのウィリアム・ベネットとの2ショットも投稿されました。オールターナティヴ精神は死なず。ここに脈々と息づいています。マークの作品はどれもこれも名盤です。これも名作。

Primitive Emotions / Alternative TV (2019 Winter Hill)