オールターナティヴTVの実に14年ぶりとなるスタジオ・アルバムです。前作「レヴォリューション」からはマーク・ペリー以外のメンバーが大幅に入れ替わりました。そりゃそうです。なんたって14年ぶりですから。この間、コンスタントにライヴをやっていた風でもありませんし。

 ちょうどこのアルバムが発表された頃、オールターナティヴTVの初期作品と因縁のソロ、「スナッピー・ターンズ」を収めたボックス・セットがチェリー・レッドから発売され、さらにマークの別バンド、ドア・アンド・ウィンドウも再発されるなど、ATV再評価機運が高まっていました。

 ラインナップはマーク・ペリーがボーカルとシンセ、リー・マクファッデンとクライヴ・ギブリンのツイン・ギター、スティーヴ・カーターのベース、ドラムとプロダクションのデイヴ・モーガンの5人組となっています。シンプルなロック・バンド・スタイルだと言えます。

 さすがに14年前の前作を引き合いに出して良いものか考えてしまいますが、自らのルーツに原点回帰した前作に対して、本作はよりパンクないしポスト・パンク時代、すなわちATVの初期のサウンドに近いものを感じます。精神としてのパンクとともに、サウンドでもパンク。

 アルバムはタイトルともなった「オポージング・フォーセズ」から始まります。ツイン・ギターが唸る疾走感あふれるパンク・チューンです。この曲の一節、♪何も重要じゃないっていう現実に直面できるか♪という問いかけが内ジャケットを飾っています。パンク精神の発露です。

 続く「バブル」のボーカルはマークではないように聴こえますが、こちらはニューヨーク・パンク的な色彩もあるアート風味満載のギター・ソングです。ここらあたりで俄然、ATVファンは嬉しくなってきます。かつてのサウンドが新たな装いで息を吹き返したかのようです。

 「フレンチ・ガールズ」は実験的なボーカル・スタイルのガレージ的なギター・ロックですが、続く「ドリーム」はピアノをフィーチャーしたニール・ヤングのような曲です。ここで90年代のATVが顔を出します。彼らの音楽的ルーツから素直に発露する曲でしょう。

 斜に構えたようなカッコいいリフのギターが奏でる「ランブリング・オブ・マッドマン」が出たかと安心した途端、これぞATVとも言うべき暗黒ソング、「ザ・ヴィジター」が登場します。これぞポスト・パンクのダーク・ソングです。陰鬱なバスドラにのせてマークが語ります。

 と思うと、今度はまるでバズコックスのようなパンク曲「ハロー・ニューヨーク」、続いてポスト・パンク的な「ウィンターランド」。交互にストレートなパンク曲とひねったポスト・パンク曲が登場します。新たなラインナップで創作意欲が旺盛になっている様子がうかがえます。

 終盤の3曲、「スターズ」、「テンション・ビトゥイーン・オーダー・アンド・カオス」、「ベースメント・ルーム」はやはりアルバムのハイライトです。「ヴァイビング」の頃のフリー・フォームなサウンドを最初期のパンク・サウンドで彩ったかのような曲作りがいいです。

 やはりマーク・ペリーは天才です。14年間のブランクはむしろマークにとって充電期間となったと言えるのではないでしょうか。現代的なつるんとした音ではなくて、ざらざらとした手触りが胸をこするサウンドでATVが蘇りました。こういうサウンドが聴きたかった。
 
Opposing Forces / Alternative TV (2015 Public Domain)