明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
 カズコ・ホーキとその仲間たちであるフランク・チキンズは、その仲間たちの変遷によって何期かに分けることができます。本作品は、そのうちの第三期、アツコ・カムラとのデュオ時代に発表された通算3枚目のアルバム、のリミックス・アルバムです。

 元のアルバムを聴いていないので、どこがどうリミックスなのか今一つ判然としませんが、本作品は徳間ジャパンから日本でも発売されたので、日本ではこちらの方が標準として機能しています。リミックス然ともしていませんし。

 彼女たちはイギリスのチャンネル4で放映されていた「カズコズ・カラオケ・クラブ」でイギリスのお茶の間を席巻しました。政治家や俳優などさまざまなゲストを迎えたトーク・ショーながら、ゲストにカラオケで一曲歌わせるという滅茶苦茶な趣向の番組です。

 しかし、時系列を整理すると、その番組は1989年5月から、このアルバムの元アルバムは1988年の発表ですから、こちらが先ということになります。カラオケ番組が人気を博したので、テーマ・ソング「ドゥー・ザ・カラオケ」を追加した形でリミックスされています。

 ホーキさんは1978年に26歳で渡英し、1982年のフランク・チキンズ結成以来、縦横無尽の活躍を続けています。一方のカムラさんは、水玉消防団、ハネムーンズで活躍していた女性です。どすの利いたボーカルとぶんぶんベースがトレードマークでした。

 チキンズのオリジナル・メンバーだったカズミさんが辞めてしまった時、「ちょうどカムラさんがイギリスに物見遊山できていたので、即捕獲、二か月先のオーストラリアとニュージーランドに三か月にわたるツアーにいっしょにいきませんか、考える時間は5分」で、めでたく捕獲。

 ちなみに当時「三十過ぎの独身日本女性」だったこの二人、東大京大コンビです。ロッキンオンのインタビューに答えて、「でもね、東大なんて出たら、いいお嫁さんにはなれないし、ロックバンドぐらいしかすることないじゃない(笑)」。時代ですね。

 さて、このアルバム、とにかく冒頭の「ドゥ・ザ・カラオケ」が素晴らしいすぎます。私はこの演歌仕様の曲のインパクトから未だに自由になれません。特に謎の芸者キャラのカムラさんが日本語で歌うところをホーキさんが英訳していくところなんて鳥肌ものです。

 演奏は前二作と異なり、ホーキさんの同居人クライブ・ベルとジャスティン・アダムスの二人が担当しています。クライブは日本で尺八を2年間修業したという何でも屋さんですし、ジャスティンはジャー・ウォブルやロバート・プラントとも共演する幅広いギタリストです。

 何でもできる人たちなので、曲調は本当にさまざまです。ロック調あり、カントリー調あり、香港調あり、ハウスありと、いろんな楽器を使った軽やかな演奏にボーカルを乗せていくスタイルです。ミュージカルだと考えれば全体の統一感が浮かび上がってきます。

 「ドゥ・ザ・カラオケ」は件のTV番組のテーマ曲として、シングル化もされました。B面は「ジャッキー・チェン」。随分、英語の発音を直されたそうですけれども、日本なまり丸出しで歌われる曲の数々には、思わず人生なるものを考えさせられます。傑作です。

Club Monkey / Frank Chickens (1989 Flying Lecords)