何ともパンクなジャケットに包まれたオールターナティヴTVのアルバム「マイ・ライフ・アズ・ア・チャイルド・スター」です。米国盤のジャケットはマーク・ペリーと恐らくアリソンと思われるパンクな女性の写真で、そちらはさらにもろパンクです。

 本作のブックレットには各楽曲ごとに参加ミュージシャンがクレジットされており、ATVのメンバーとゲストの区別がありません。参加しているのはマークを入れて計7人ですが、結構曲ごとにばらばらで、もはやATVはマーク・ペリーのソロ・プロジェクトと考えてよさそうです。

 中でも大きな役割を果たしているのは、「ピープ・ショウ」ではメンバーとしてクレジットされていたアリソン・フィリップスです。彼女は14曲中9曲に参加して、ドラム、パーカッションを中心にギターやボーカルまで披露しています。マークと二人だけの曲も2曲あります。

 ブックレットにはマークの友人であるリー・グーニーに対して、「過去4年間にわたってこのプロジェクトのために働いてくれた」と謝辞が述べられています。前作「ドラゴン・ラヴ」以降の4年間がこのプロジェクトに費やされたというわけです。

 私はその4年間のうちの2年半、仕事の関係でロンドンに住んでいて、マークと友達になりました。その間、彼は新作を制作中だけれども、なかなか出してくれるレーベルが見つからないと話してくれました。オーバーグラウンド・レコードからの発表まで時間がかかっています。

 マークは音楽で食べていけているわけではなく、この当時、ロンドン郊外の町の自治体に勤務しながら音楽活動をしていました。その傍らでライヴを行ったり、アルバムを制作したりですから、時間がかかるのも無理からぬ話です。

 彼のライヴも見に行きました。ステージのあるパブでのソロ・ライヴで、そこで披露された本作からの「チャイルド・スター」は忘れられません。調子が悪かったギターを放り投げてのほぼアカペラでの歌はとても感動的でした。本当にいい歌なんです。

 ライヴの時にはまだアルバムは発表されていませんでしたが、すでにマスターテープは完成しており、マークは私のためにそれをカセットに録音してくれていました。そのため、予習ばっちりの私には大変感動的なライヴでありました。

 長期にわたる制作のため、メンバーも固定しておらず、曲調もさまざまですけれども、アルバムはしっかりと統一されています。インストゥルメンタルも1曲ありますが、マークの歌を中心としたサウンドは1960年代、1970年代を生きてきた者には大そうなじみがある世界です。

 ガレージ・ロックの知的な進化型といった趣で、さまざまな音楽からの影響を感じさせながらシンプルな世界を構築しています。湿り気のあるマークのボーカルも素晴らしい。「チャイルド・スター」、「メルティング・ポット」、「パラサイト」、「マジック」の流れなど最高です。

 宝物のカセットとCDを比べると曲順が異なりますし、曲名も微妙に違ったりして、これまた嬉しい。そんなパーソナルな思い入れを大事にしながら、いつまでも聴いていたい作品です。もはやいつの時代のサウンドか分からない、時を超えたサウンドです。

My Life As A Child Star / Alternative TV (1994 Overground)