最初に謝っておかなければなりません。私はこのジャケットを生活感を見事に昇華した好いジャケットだなと思っていたんですが、完全に誤解していました。これはランドリー・ルームではなかったんですね。てっきりドラム式洗濯機かと思っていました。

 誤解は誤解として、凄くいい感じのジャケットであることは間違いありません。この作品が発表されたのは大貫妙子23歳の頃。20代の清潔感が溢れて、時代を超える素晴らしいジャケットです。それにサウンドにもぴったりです。

 この作品は1977年7月に発表された大貫妙子のセカンド・アルバムです。少し前に、テレビ東京の「YOUは何しに日本へ」で、このアルバムを求めてアメリカから日本にやって来たお兄さんが登場したおかげでちょっとしたブームになりました。

 私もこの頃の大貫の作品はYOUを見るまで気にしてきませんでした。何でも黒船に頼るのは日本の良くないところですけれども、この作品を聴く機会を与えてくれたということに素直に感謝したいと思います。シティ・ポップ黎明期の名盤に光を与えてくれたわけですから。

 参加ミュージシャンは、全曲のアレンジを手がけている坂本龍一に加え、細野晴臣、大村憲司、渡辺香津美、後藤次利、今井裕、向井滋春、斉藤ノブ、清水靖晃、山下達郎などの今となっては大御所ばかり。もちろん、この頃はみんな20代で知る人ぞ知る人々でした。

 しかし、何よりもこのアルバムに太い心棒を通しているのは、当時のニューヨーク最先端のミュージシャン集団、ザ・スタッフのドラマー、クリス・パーカーです。来日公演の場で直談判に及んだという制作陣の惚れ込みようがこの客演を成功させました。

 プロデューサーの国吉静治は、「すごい緊張感と期待の中で最初の曲が始まったとたん、何だかいつもと違う次元の演奏が目の前で展開され」たと述懐しています。「ドラマーがひとりニューヨークから参加しただけで、こんなにも皆の演奏が違うのかと」驚いたそうです。

 スタッフと言えば当時のミュージシャンズ・ミュージシャンです。大貫始め、みんなが憧れて「コピーしまくっていた」ジャンルのトップランナーです。大貫も「演奏においてこれだけのスピード感とパワーがすでにあった」ことに驚いています。

 サウンドはファンキーでソウルフルな香りのするクロスオーバー・サウンドによるシティ・ポップです。それまでのフォーク色が強かったシーンからは一線を画する洗練された演奏が素晴らしいです。1970年代のサウンドの中でも極上の部類に入ります。

 大貫は、「私自身の声が、こういったジャンルに合うか合わないか、などということは考えもしませんでした」と言っています。いえいえピッタリです。このサウンドにジャズ・ボーカルだとおそらくつまらなかったでしょう。若干のミスマッチ感が素晴らしいです。

 少ない言葉で何ということのない描写を輝かせる大貫の歌はこの頃からすでに完成されています。クロスオーバーが陳腐化してしまう前の最も輝いていた時代に生まれ落ちた完成度の高いアルバムです。改めてYOUに感謝しなければなりません。

Sunshower / Taeko Ohnuki (1977 Pony Canyon)