マーク・ペリーにとってオールターナティヴTVという名前はどういう意味があるのでしょうか。本人に聞いてみたいところです。マークはソロ名義のレコードも発表していますが、ソロでATVと名乗ることもあり、他のバンド名での活動も多い人です。

 しかし、あるところからずっとATVの名前を使うようになりました。それは1985年のATV再結成からです。再結成とはいえ、マーク以外の過去のメンバーは一人もいません。アレックス・ファーガソンもデニス・バーンズも不在です。

 この作品は、再結成後初めてのアルバムになります。題して「ピープ・ショウ」です。当初、1987年にアナグラム・レコードからLPとして発表になりましたが、1996年にオーバーグラウンド・レコードから拡張版CDとして発表されました。

 拡張とは、前年に発表されていたEP2枚を追加して、曲順をごちゃ混ぜにしたという若干掟破りの仕様です。2枚のEPは「ウェルカム・トゥ・ジ・エンド・オブ・ファン」と「セックス/ラヴ」で、いずれも3曲ずつ、計6曲の追加になります。

 ATVのラインナップは御大マーク・ペリーに加えて、ベースとキーボードでスティーヴ・カネル、ドラムの紅一点アリソン・フィリップスの三人とされています。マーク以外の2人はATVとしての活動以外にさほど目立った活動はありません。

 しかし、EPの時にはギターのカール・ブレイクがメンバーとして参加していました。ブレイクはマークやプロデュース補助のグラント・ショウビズらとともにザ・リフレクションズとしても活動している他、有名どころではダニエル・ダックスとのレモン・キトゥンズなどがあります。

 ギタリストのブレイクの後釜となったのはインスタント・オートマトンズなる実験的なバンドをやっていたプロタグことマーティン・ネイシュで、「ピープ・ショウ」ではほとんどの曲でギターを弾いていますが、メンバーとしてのクレジットはありません。

 こうした面々で繰り広げられるサウンドは、少なくとも表面上は初期のATVのアヴァンギャルドなものではなく、よりポップな色彩が強くなっています。マークはパンクのスポークスマンですが、もともとさまざまな音楽に親しんできた人ですから、自然と言えば自然の流れ。

 とはいえ、ベースとドラムとギターがそれぞれバラバラの方向を向いて演奏していながら、曲としてのまとまりが出来ている。これに近いのはザ・フォールのサウンドでしょう。ただし、同じマークでも、ペリーさんの方がMESに比べてより弾き語りが似合うという違いがあります。

 きらきらしたポップ・ソングもあれば、パートナーだったアノとデュエットする「ボーイ・イーツ・ガール」などホラー映画的な曲もあり、12分を超える「アニマル」ではドラマを展開もします。アルバム・タイトルが暗示するごとく、裸のATVをかいま見ることができるアルバムです。

 ヒット・チャートとは無縁の音楽ではありますけれども、パンク・ファンジン「スニッフィン・グルー」の時から変わらぬパンク精神にはコアなファンがついています。英国のロック界はこういう良質なアーティストの厚い層が支えているのだなとコアなファンの私は思います。 

Peep Show / Alternative TV (1987 Anagram)