デビュー・アルバムの大成功でいきなりスーパースターとなったガンズ・アンド・ローゼズですが、新作の制作にはいろいろと困難があったようで、デビューEPを中心とした「GN’Rライズ」の発表はあったものの、新たなスタジオ作品は4年待たされました。

 しかし、そこはスキャンダラスなバンドですから、ニュースが途切れることはなく、久しぶりのアルバムだというのに、まるで間延び感はありませんでした。しかも、2枚同時に発売するという狼藉ぶり。溜まっていたマグマが一気に噴き出た様子です。

 「ユーズ・ユア・イリュージョン」のIとIIと題され、ジャケットも同じ柄で色違いとなった実質2枚組と言っても良い作品ですけれども、やはり別々に発売されていますから、別作品として扱った方が面白いです。何かと比較できますし。

 そうなんです。ファン同士で「I」がいいか「II」がいいか論争するのが何よりも楽しそうなんです。どっちもいいと言う人が必ず出てきますが、そういうことではありません。両方ともいいと思っていても、あえて争う。大人のたしなみでしょう。

 こちらは「I」の方、「ノーヴェンバー・レイン」が収録されている方です。この作品だけで全16曲、収録時間は76分もあります。どれだけ溜まっていたんでしょうね。もう一枚あると思うと物凄いボリュームです。まさに創作意欲の絶頂にあったガンズです。

 本作の話題は、ポール・マッカートニーの「死ぬのは奴らだ」をオリジナルに忠実にカバーしていること、フィンランド・メタル、ハノイ・ロックスのマイケル・モンロー、そしてショック・ロックの御大アリス・クーパーのゲスト参加です。特にアリスの悪魔ボーカルは特筆ものです。

 なお、ガンズのドラマーはドラッグがらみでスティーヴン・アドラーからマット・ソーラムに交代しており、さらにキーボードでディジー・リードが加入したため、6人組となりました。その上に、多彩なゲストを招くという大物感あふれる仕様になっています。

 さらに、ギターのイジー・ストラドリンがリード・ボーカルを披露するなど、格段に音楽の幅が広がっています。イジーによるブルース寄りの曲や、アクセルの壮大なドラマ、スラッシュによる見かけに寄らずクラシックのような端正なソロなど、さまざまな側面を堪能できます。

 本作からヒットしたのはまず「ドント・クライ」。美しいメロディーをアクセルが地声で歌うバラードは彼らの魅力の一つの姿です。もちろん二人のギターの活躍もあって、しっかりハード・ロック・バンドのバラードに仕上がっています。カラオケ映えする一曲です。

 一方、壮大なドラマが繰り広げられる「ノーヴェンバー・レイン」は、スラッシュのギター・ソロのある意味での完成形です。やんちゃなバンドがプログレもかくやと思わせるドラマ性を発揮しており、ここまで演じられれば感動するしかありません。

 本作品は「II」に阻まれて1位になることはできませんでした。普通、「I」の方が売れると思うのですが、なぜか「II」。日本でも「II」が2位で「I」が3位と律儀な結果になっています。12億回再生の「ノーヴェンバー・レイン」が筋金入りのガンズ・ファンから敬遠された説を推します。

Use Your Illusion I / Guns N' Roses (1991 Geffen)