デルジベットは1984年にバンドを結成していますから、「不条理」はほぼ35年目の作品になります。途中13年ほど活動を停止していた時期がありますけれども、ほぼオリジナルメンバーで35年だってまだ新作が出てくるというのはそうそうあることではありません。

 しかも元気です。調べてみるとバンド・メンバーは私とほぼ同年代、そろそろ還暦を迎えるという年齢にも関わらず、まるで若々しいサウンドです。さらに驚異なのはフロントマン、イッセイのビジュアルです。他のメンバーは年相応なところが安心ポイントです。

 公式サイトにも、「メンバー内で唯一、体形を維持している驚異的な人間」と紹介されています。「今でもビジュアル系と呼ばれるゆえんである」とのこと。そうなんです。彼らは元祖ビジュアル系と呼ばれるバンドです。V系は1990年代ですから、確かに先取りです。

 デルジベットは、イッセイが「星くず兄弟の伝説」で映画デビューした際、プロデューサーだった近田春夫に見初められたことからデビューに至ります。メジャー・デビューは1985年のことで、同年にはアルバムも発表し、以降活動休止までに12枚のアルバムを残しています。

 2009年に活動を再開した後は、インディーズとなるのでしょうか、ポップ・マニアなるレーベルからアルバムを発表しており、本作は7枚目となります。何と精力的なことでしょう。ジャケットのビジュアルにも力が入っています。まさに不条理そのもの。

 デルジベットの音楽面でのリーダー的存在はギターの吉田光です。1980年にはプロとして活動をスタートさせており、以降、ホッピー神山や岡野ハジメなどとバンドを結成して全米デビューも飾っています。さらにプロデュースやサポートギタリストとしても大活躍しています。

 他のメンバーの活動も多岐にわたっていますが、腕達者が集まったバンドというよりも、デルジベットでの活躍がそうした活動につながっているということですから、このバンドに対する業界の方々の高い評価というのが分かります。

 デルジベットのサウンドは、1970年代に洋楽を聴いていた同年代として、隅から隅までとても心地よく響きます。もちろんデジタル機材も使っているのでしょうけれども、ギターを中心とするストレートなロックです。グルーヴもあの頃のロックを彷彿させます。

 実際に映画やドラマに出演もしており、さらにパントマイムの公演活動もしているというイッセイの演劇的なボーカルは、しばしば歌謡曲的と言われるようですが、むしろデヴィッド・ボウイの路線ではないでしょうか。還暦前とはとても思えない美しい声です。

 イッセイが担当している歌詞の世界は、ゴシック&デカダンを極めていて、これまた清々しいです。「水銀の湖」、「夢魔」、「月蝕の夜」、「彷徨える異邦人」、「アメジスト色の朝」などなど、タイトルを並べるだけで嬉しくなってしまいます。

 こうした世界観を徹底的に追及するところに彼らの真価があります。迷いがない。どの曲もしっかりと構成されており、クオリティーにもぶれがない。「夜を切り取り 朝を求めてジグソーパズルは崩れ落ちてゆく・・・」。永遠に完成しないパズルに挑み続ける。かっこいいです。

Fujouri / Der Zibet (2018 Pop Mania)