本作品が発表される前に、YMOは散開することが発表されました。解散ではなく散開。メンバー全員がソロ活動をすることになることが分かっていましたから、確かに散開という用語はぴったりです。誰が言い出したのか、複数の人物が自分だというため分からないそうですが。

 前作「浮気なぼくら」が最後のアルバムとなるという了解があったはずではなかったのでしょうか。もうそんなに長くはないだろうという雰囲気は漂っていましたけれども、「浮気なぼくら」はそこそこヒットしましたし、自分たちの好きにはできなかったんでしょう。

 ここらあたりはスーパースターの苦悩です。自分たちだけで解散を決めるわけにはいかない。YMOは3人の思惑を超えた存在となっていました。誰も解散を言い出せない状態に終止符を打ったのはアルファ・レコードの村井社長でした。

 細野晴臣の反応は「え、解散してもいいの?」というものだったそうです。いい言葉ですね。袋小路に入り込んでいた状態からぱーっと視界が広がる出来事だったことでしょう。そこから徐々にYMOの散開が公になっていき、この散開記念アルバムが発表されました。

 本作の発表は1983年12月、散開発表の2ヶ月くらい後のことです。制作は前年に始まっていたそうですから、散開が決まる前だったでしょうが、そんなことには関係なく、本作品には解放感が漂っている気がします。心底明るいアルバムです。

 アルバム・タイトルはファンを意識したのでしょう、「サーヴィス」です。そしてYMOの楽曲全7曲に加えて、三宅裕司率いるスーパー・エキセントリック・シアター(SET)のコメディ・スケッチがきっちり7本収録されています。「増殖」と同じ趣向で、これもサーヴィスの一環でしょう。

 SETは1979年に三宅裕司が立ち上げた劇団で、この頃ラジオをきっかけに徐々に人気を獲得しつつありました。高橋幸宏がラジオ曲でみたSETのコントを気に入り、自身の「オールナイト・ニッポン」に三宅をゲストで呼んで以来の仲となりました。

 それをきっかけに本作への参加となったわけです。「増殖」のスネークマン・ショーと異なり、SETの笑いは時代に密着しすぎない明るい笑いです。時代を一身に背負わされてきたYMOの肩の荷が下りた感をこの人選にも感じてしまいます。

 コントと曲が律儀なまでに交互に配されています。聴きにくいかと思いきや、全体に軽やかで明るいため、むしろ聴きやすいです。収録曲はそれぞれのソロ・アルバムに入っていてもおかしくないような曲もあるため、続けて聴くより一服あった方がすんなり耳に馴染みます。

 あい変わらず三人がスタジオに揃うことはまれだったそうですけれども、和気あいあいとした空気感が漂います。それはコントによるところも大きいものの、根っこはサウンドにあります。あまり評価されないアルバムですが、私はけっこう好きなアルバムです。

 YMOはこれで区切りをつけることになりましたけれども、SETはこのまま息の長い活動をすることになります。この当時、SETとYMOはミスマッチな気がしていたものですけれども、時は流れ、それぞれの行く末が見えてくると、むしろベストマッチではないかと思えてきました。

Service / YMO (1983 Alfa)