おとといフライデーの快進撃が止まりません。前作から約半年で新曲「スプリングフィーバー」が発表されました。今回はクラウド・ファンディングはやっていなかった模様ですから、その意味でも活動が軌道にのってきたのでしょう。

 私はシングルはほとんど買わないアルバム派なのですが、彼女たちの場合はアルバムの発表があるのかないのか、よく分からないために、シングルを買わないわけにはいかないのが悩ましいです。でも、そろそろアルバムを待とうかなという気になってきました。

 ともあれ、「スプリング・フィーバー」です。今回のプロデューサーはエンジョイ・ミュージック・クラブです。彼らは2012年に「エンジョイミュージック」を合言葉に集まった3人組ラップグループです。ラップではありますけれども、EDMとは無関係という面白い人達です。

 彼らはバカリズムと仲が良いようで、バカリズム脚本主演で二階堂ふみとオードリー若林が出演していたテレビドラマ「住住」に楽曲を提供したり、テレビ東京でコラボしたりと何だか面白い活動を繰り広げています。テレビ向きの人たちです。

 彼らが提供した「スプリング・フィーバー」は終末観が漂う歌詞を紗倉まなと小島みなみがいつものように淡々と歌います。映像創作ユニット「ピンクじゃなくても」による二人別々の日常生活的映像が終末観を強めているように思います。

 ♪起きぬけベッドでスマホ♪をつけると♪ミサイル発射って本当?♪となっているんです。私の世代だとこれは核戦争による人類破滅を連想してしまいます。Jアラートは大気圏突破ですし、カフェで飲むのは♪世界の終わりのミルクレープ♪です。

 歌詞のセンスが素晴らしいです。二人のキャラクターを活かして、日常を描けば描くほど終末観が高まります。♪平然と終わってく平成♪への鎮魂歌としてよく出来た歌だと思います。なおカフェは因縁のスターバックスではなく♪エクセルシオール♪でした。

 おとフラのコンセプトは「ちょっと前衛的」です。そのコンセプトを最もよく体現している曲「私ほとんどスカイフィッシュ」はこの作品にも収録されました。もはや彼女たちのテーマソングです。彼女たち自身がスカイフィッシュのような不思議な存在ですからね。

 ここでのスカイフィッシュはChu-boによるリミックスです。ベースラインが印象的なゆったりとしたリミックスになっており、二人のボーカルがのんびりした感じに聴こえてきます。トリプルファイヤー提供のこの曲は全力で遊ばれており頼もしい限りです。

 今回のシングルCDには上記2曲とアイドルらしく「スプリング・フィーバー」のインストゥルメンタル・バージョンが入っています。ゆったりとしたリズムがこれもまた不思議に切ない魅力を放っています。ボーカル不在でなお存在感を発揮する二人の力はなかなかのものです。

 彼女たちは確かに「ちょっと前衛的」です。紗倉まなはゴメスや呂布カルマとラップ対決もしたそうですし、彼女の薫陶を受けた戸田真琴がエッセイを書いたり、彼女のまわりではさまざまなカルチャーが渦巻いています。何とも素敵なユニットです。

Spring Fever / Ototoy Friday (2019 Trash-Up)