「ロマンチック天使つかさ夢見る15才」。伊藤つかさの2枚目のアルバムはつかさ15才のバースデイ・メモリアルです。実際にはお誕生日の1週間後の発表ですけれども、正真正銘の15才、ちょうど中学校を卒業するタイミングです。

 彼女の場合には年齢を詐称しているのではないかとも思ったものです。芸能界の慣行とは異なり、実際にはもっと幼いのではないかという疑惑です。それほどに伊藤つかさの可愛らしさは際立っていました。草刈正雄鞍馬天狗の杉作役もはまり役でしたし。

 デビュー作が大ヒットした余韻も残る2作目はまたとんでもない作品になりました。曲を提供した作家陣が凄いです。いいですか、いきますよ、大貫妙子、原由子、矢野顕子、竹内まりや、坂本龍一、安井かずみ、加藤和彦、高橋幸宏、そして真打ちが伊藤つかさ!!

 誰一人、説明を要する人はいません。編曲にも大村憲司、坂本龍一、高橋幸宏のYMO人脈に加えて、清水信之と後藤次利という当時まだ気鋭のクリエイターがあたっています。前作はフォーク系だったのに対し、今度はよりエッジの効いた人選です。

 なんと藤井陽一氏のライナーによれば、加藤和彦、大貫妙子、高橋幸宏の人選は本人の希望だそうです。さすが中学生、怖いもの知らずというか大人と子どもの違いは大きいです。そのミスマッチ感が本作品を問題作に仕上げているのだと思います。

 豪華作家陣は一生懸命子ども子どもしている15歳の伊藤つかさ目線にたって曲作りをしています。矢野顕子も大貫妙子も安井かずみも可愛らしい歌詞を書いています。坂本、高橋のYMOコンビはさすがに歌詞は勘弁してくださいと三浦光紀Pに泣きついたと思われます。

 坂本の曲には当時ぶいぶい言わせていたコピーライターの中畑貴志が「恋はルンルン」とさすがに斬新な歌詞を提供していますし、高橋の曲にはお兄さんの信之が15才の少女っぽい歌詞をつけています。「風になって」です。♪泣かないわ!♪。

 伊藤つかさは前作では自作の歌詞を披露していましたが、今度は作詞作曲です。「彼」という曲で、清水信之によって、打ち込みリズムがカッコいい曲に仕上がっています。このように皆がつかさちゃんをほっておけない。そんな感じが暖かさを連れてきます。

 竹内まりやは自らコーラスに参加していますし、大村憲司は自らギターを弾いている模様です。シングル・カットされた原由子の「夢見るSeason」や加藤和彦の「夕暮れ物語」のみならず、まるで捨て曲がない。テクノ歌謡、イエロー・マジック歌謡の名盤であると思います。

 伊藤つかさのボーカルは決して下手ではありません。幼いだけです。子どもが頑張って意外にしっかり歌ってる。ロマンチック・ソプラノの歌声は聴いているこちらがはらはらするのですが、ちゃんと歌いきっています。この年齢の彼女にしかできない歌唱です。

 私はLPを持っていたので気付きませんでしたが、カセット盤の復刻となったCDには「つかさのおしゃべり」が4曲収録されています。女子中学生のお話ですからね。家人に変な顔をされてしまいました。大変丁寧な愛のある復刻で結構なのですが、さすがにそこはちょっと...。

Sayonara Con-Nichiwa / Tsukasa Itoh (1982 Japan)