「スネークマンショーは、プロデューサー、選曲家である桑原茂一が、アナウンサーの小林克也、俳優の伊武雅刀とともに結成した伝説のユニット」です。名前からして分かるようにアメリカの伝説的なDJウルフマン・ジャックのショーを手本にしたと言われています。

 私が彼らのことを知ったのはご多聞に漏れずYMOの「増殖」でした。しかし、彼らの伝説ともなっているラジオ・ショーはずっと早く1976年9月に始まっています。残念ながら聴いたことがありませんが、このレコードからその一端を垣間見ることができます。

 これを聴く限り、ウルフマン・ジャック・ショーとモンティ・パイソンが合体したような感じです。曲の合間に挟まれるギャグがモンティ・パイソン的。今ならユーチューブに最適な毒のあるギャグの数々がスネークマンショーの持ち味でした。

 「増殖」で一般的な知名度を高めたスネークマンショーにはさまざまなレコード会社からレコード制作のオファーがあったそうですが、最初から決着は見えています。案の定、YMOのアルファ・レコードからデビューすることになりました。これがそのデビュー盤です。

 収録された楽曲は9曲、ギャグは9つと同数です。しかし、この二つの境目は実は曖昧で、スネークマンショーの面々が歌にも進出していますし、半ばギャグと化した曲もあります。そこが「増殖」との違いであり、スネークマンショーの真骨頂です。

 ギャグの数々を久しぶりに聴いてみると、何だかとても懐かしいです。そういえばチリ紙交換は見なくなって久しいなあとか、ポール・マッカートニーは麻薬所持で逮捕されたんだったなあとか、大河内伝次郎に鳳啓助、林家三平、大橋巨泉...。

 ベストヒットUSA小林克也の薬局のおじさん、デスラー総統伊武雅刀の刑事さんなど今でも十分に面白いとは思いますけれども、いわゆるサブカル的な笑いの数々には眉を顰める人もいらっしゃることでしょう。若い人がどう捉えるのか聞いてみたいものです。

 楽曲は面白いです。YMOのフジカセットCM曲「磁性紀」、シーナ&ザ・ロケッツのデビュー時期の曲「レモンティー」、サンディーのモータウン・カバー「ジミー・マック」、ニューヨークのロカビリー・グループ、ザ・ロカッツ、ドイツの怪人クラウス・ノミが既発曲です。

 このアルバムのための曲としては、ドクター・ケスラーこと加藤和彦とムーンライダーズによる「メケ・メケ」、プラスチックスと細野晴臣、高橋幸宏によるうんこ頭の「黄金のクラップヘッズ」があります。アルファ・レコードならではの陣容です。

 そしてギャグと合体した伊武雅刀とザ・スポイルとお友達による「ストップ・ザ・ニューウェイブ」、日本初のラップ曲「咲坂と桃内のごきげんいかがワン・ツゥ・スリー」が光ります。特に後者は細野晴臣のベースがヒップホップ的で素晴らしい。

 小林と伊武の掛け合い漫才のようなラップも決まっていて、この曲こそが本作の白眉です。ただ、アルバム発表当時はクラウス・ノミが一番のインパクトでした。彼は一躍時の人となり、日本のCMに起用されるなど活躍したのでした。さすがは「選曲家」桑原茂一です。

Snakeman Show / Snakeman Show(1981 Alfa)