創作アーチストのんのファースト・ミニ・アルバムが登場しました。確かにミニ・アルバムは初めてですけれども、そもそもミニ・アルバムって何でしょう。のん自身もブログにて、よく分からないと言ってます。何だか面白いですね。税金でも違うんでしょうか。

 このミニ・アルバムには本編が5曲、ボーナスとして1曲の合計6曲入りです。全体で30分弱の長さですから、確かにアルバムには1,2曲足りない感じがします。もうちょっと聴きたい気にさせてくれるところがミニ・アルバムのミニたる所以でしょう。

 カバー・アートとブックレットがそもそもさすがは創作アーチストです。アート・ディレクションは
インスタグラムが話題を読んで一躍注目を集めるアーティストとんだ林蘭です。スカパラや木村カエラなどのアーティストやファッション業界とコラボしたりしている人です。

 写真を撮ったのはビジュアルアーティストとして活躍する若手写真家takako noelです。女性三人によるコラボはアートが香り立つようで素晴らしいです。鋲の立ったティアラが殉教者的でもあり、攻撃的でもあり。ブックレットでの食品写真も気のふれたような色合いがいい。

 まずはこうしてビジュアルを眺めているだけでワインを3杯くらい行けそうです。そうして十分に盛り上がったところでサウンドです。本作の最大の話題は解散した「超天然GSキュートパンクバンド」GO!GO!7188の二人ユウとノマアキコとの「奇跡のコラボ!」です。

 のんは中学生の頃、GO!GO!7188のコピーバンドをやっており、彼女たちは「私の青春のスーパーヒーローで、(音楽活動の)原点」なんだそうです。彼女たちは「やまないガール」と「涙の味、苦い味」の2曲を提供したばかりか演奏にも参加しています。

 一方でのんの曲が3曲、うち「憧れて」と「青い灼熱」の2曲がステージ・バンドとなるのんシガレッツによる演奏です。ボーナス曲は「岩手のことを思って書いた曲」「この街は」で、これは岩手の小学生たちが合唱で参加している異質な曲です。ボーナスの表記は正解です。

 編曲はすべて飯尾芳史が担当しています。基本的にはシンプルなアレンジで、ギターとベース、ドラムによるロック仕様の編曲となっています。「モヤモヤ」だけはストリングスやトランペットが入っており、Jポップ仕様のバラードですが、それでも基本はロックです。

 7188組の曲はのんをイメージして歌詞を書いているというだけあって、のんの歌詞と並べてもまるで違和感はありません。特に「涙の味、苦い味」などはのんの学生時代の「黒歴史」、アンコールでヘロヘロになったという経験が歌い込まれていて微笑ましいです。

 のんのボーカルは忌野清志郎の影響下にあります。声が震えたりべちゃっと広がったりするところが何とも言えず素敵です。このボーカルの魅力を最大限に生かすには、ガレージ的なロックンロールが最適なんだということがよく分かります。

 これまでの作品に比べてもよりシンプルになっているように思います。のんシガレッツとの演奏にも磨きがかかり、ますます70年代80年代のロック的な様相を呈してきました。私などには大変安心して聴けるサウンドを若々しいボーカルで彩って頂いて至福です。

参照:のんインタビュー「ベビーを侮るなかれ!」
Babyface / Non (2019 Kaiwa(Re)cords)