全米が泣いたかどうかは知りませんが、日本の片隅で私は泣きました。「アリー/スター誕生」は何度も映画化されている作品ですから、見る前にストーリーは分かっていましたけれども、きっちりと泣かされました。何とも切ない映画でした。

 難癖をつけるとすれば、ブラッドリー・クーパーがスーパースター歌手というには少し無理がありましたし、レディー・ガガは無名の歌手には見えませんでした。しかし、それは後半になると長所に変わりますし、そもそも逆だったら映画も成立していませんね。良い映画でした。

 映画を見てから結構時間が経ちましたけれども、「愛のうた」が頭から離れないので、こうしてサウンドトラックを購入することにしました。「この冬、人生を変える『うた』に出会」い、「そして2人の唄が、見るものすべての心を震わ」した結果です。

 スター誕生はその内容からしてミュージカル映画と言っても良いほど、主演のブラッドリー・クーパーとレディー・ガガが歌を歌います。この二人の歌を軸に話が進んでいくので、歌だけ並べても、ある程度まではストーリーが分かる仕掛けになっています。

 さらに丁寧なことに、サントラ盤には映画内のダイアローグの部分が少しずつ挿入されており、より映画を追体験できるという仕事がしてあります。そのおかげでそれぞれの歌の場面が鮮やかによみがえってきます。感動も倍加するというものです。

 クーパーはアカデミー賞ノミネートの常連組ですけれども、本作品までは人前で歌ったことなどなかったそうです。本作は猛特訓の成果ということです。音楽の指南役はウィリー・ネルソンの息子ルーカス・ネルソンで、彼のバンドはクーパーのバック・バンドを務めました。

 このバンド、実際にコーチェラやグラストンベリーなどの音楽フェスにて、ステージアクトの合間に演奏している姿を映画を収録するという本格派ぶりを発揮しています。クーパーのボーカルとギターも直前まで素人だったとは思えない迫力ではあります。

 レディー・ガガも自身の人脈から気鋭のプロダクション・チームを参加させ、変われないクーパーと異なり、カントリー・ロックからコンテンポラリーへと着実に変容していくアリーの姿を見事に曲で表現しています。ガガさん、懐が深いです。

 ガガの方も、コーチェラ・フェスの自身のパフォーマンスの途中でアリーの曲を収録したり、「サタデー・ナイト・ライヴ」の収録中にスタジオを借りて撮影するなど、これまたリアルを追及した映画撮影になっています。クーパー監督のこだわりがいいです。

 楽曲の中ではシングル・カットされた「シャロウ(愛のうた)」と「オールウェイズ・リメンバー・アス・ディス・ウェイ」がやはり際立っています。レディー・ガガはただでさえ迫力があるのに、映画で物語を重ねられると感動も倍増してしまいます。これは反則です。

 バーバラ・ストライサンドも良かったですが、さまざまな屈託を抱えたレディー・ガガならではのリアリティーが眩しいです。それに歌詞の一言一言が重い。映画の物語を飛び越えて普遍的な高みに達した音楽であろうと思います。さすがはレディー・ガガです。

A Star Is Born Soundtrack / Bradley Cooper, Lady Gaga (2018 Interscope)