イエロー・マジック・オーケストラ初のオリコン初登場1位となったライヴ・アルバムです。前作からわずかに5ヶ月、USデビュー作から数えてもわずかに9ヶ月という異例のアルバム発表です。それがまた初登場1位ですから、この頃の彼らの勢いが分かります。

 しかも、新曲があるわけでもなく、2枚のアルバムからの曲に、坂本龍一のソロ作から1曲と、レーベル・メイトのシーナ&ロケッツに提供した曲が1曲という構成です。この勢いを消してはならじというマネジメント・サイドの思惑を感じます。

 YMOは海外でのレコード・デビューに加え、コンサート・デビューも果たします。最初は「圧倒的迫力で寿司の美味しさをシャウトする」というキャッチコピーが脳裏にこびりついているチューブスのオープニング・アクトでした。場所はロサンゼルス。ここからも1曲収録です。

 ついで1979年10月13日から11月9日まで英仏米をまわった「トランス・アトランティック・ツアー」が挙行されます。そして12月には東京で凱旋公演の運びになりました。本作にはロンドン、ニューヨーク、東京の音源が収録されました。

 ツアーにはサポート・メンバーとして、コンピューター・プログラミングに松武秀樹、ギターに渡辺香津美(注)、キーボードに矢野顕子が参加しました。しかし、レーベル同士の行き違いで渡辺の音源使用が認められず、やむなくギターは削除、坂本のキーボードが穴を埋めました。

 残念な話ですけれども、ギターがシンセに代わったことで、確かにYMOサウンドの性格がはっきりしたように思います。YMOと一脈通じるジャパンからロブ・ディーンが脱退したようなものではないかとほくそ笑んでいるのですが、いかがでしょうか。

 サウンドは実力派揃いのバンドによるライヴ演奏だけに、高橋幸宏のドラムと細野晴臣のベースの迫力がいや増しに増しています。力強いリズムに追い立てられるように、気持ちが高揚してきます。やはり楽器の達人たちは一味違います。

 疾風怒濤のごときツアーは大成功を収め、海外での人気が確かなものになると、それが増幅されて日本に伝わり、YMOはツアー中にスーパースターとなっていました。1年弱の間に激変したわけですから、彼らの感じるプレッシャーは大きなものがあったのでしょう。

 これが新人ならば、訳も分からず突っ走るところですが、彼らは功成り名を遂げたベテランでしたから、黙っているわけではありません。本作のタイトルからして、「公的抑圧」、パブリック・プレッシャーが採用されているわけです。

 邦楽に比べて洋楽の良いところは、音楽を取り巻くビジネスの思惑や芸能界政治が見えないことです。実際は日本より激しいのでしょうが、異国の地だけにお話として伝わることはあっても、感じることはほとんどありません。その煩わしさフリーが気楽です。

 YMOを巡る状況はリアルタイムで見ていてかなり鬱陶しかったです。そんなわけで当時は敬遠気味でしたが、こうして時間が経ってみると純粋にサウンドを楽しめます。やはり凄いものです。ただ、本作に収録されているMCにはちょっと面倒な気持がぶり返しました。

(注)大村憲司と書いていましたが、渡辺香津美の誤りでしたので、訂正します(6月14日9時40分)。ぺっぺけんさん、ご指摘ありがとうございました。それにしても何で間違うかなあ、ライナーノーツも参照しながら書いているのに...。お恥ずかしい限りです。

Public Pressure / Yellow Magic Orchestra (1980 Alfa)