いや、これはザッパ先生やん、と思わず唸ってしまう快作です。やってくれたのは、一般的な知名度はさほど高くないにしても、間違いなく日本の音楽界を支える存在の一人であるホッピー神山と彼の仲間たちです。恐ろしい作品です。

 ホッピー神山は自身の作品に加え、小泉今日子や氷室京介など「2000曲を越えるアレンジ&プロデュースの仕事を手掛け」、「多数のヒットCM音楽を手掛けている」と公式サイトに紹介されています。とにかく多才な人です。

 その彼の仕事の一つに、フルオケの曲を書くことがあります。フルオーケストラの譜面を書ける人というのはポピュラー音楽の世界にはなかなかいないのではないでしょうか。彼が日本のヴァン・ダイク・パークスと言われる所以です。

 そんなホッピーだからこそこの作品が出来上がりました。ファンサイトのk-maniaによれば、「フランク・ザッパの偉大な軌跡を、ホッピー神山が世界で活躍する日本の屈指のミュージシャン達とリスペクト表現!!!」した作品です。

 私の胸はこの表現を見つけて随分軽くなりました。全編、これザッパ節の洪水なので、これはトリビュートであるとお墨付きが欲しかったんです。そうと決まれば、後は気を楽にして楽しめるというもの。これは「コズミック・デブリス」か?とかいろいろ。

 本作品にはメイキング映像とアニメが収録されたDVDが附録として付けられており、これがまた「200モーテル」あたりへのトリビュートになっています。アニメの方はミスター・ビックフォードのようなクレイではないので、さほどではないような気がしますが。

 作品に参加しているのは、ルーインズの吉田達也、オルタード・ステイツのナスノミツル、ボンデージ・フルーツの鬼怒無月と高良久美子、元ピンクの福岡ユタカ、デミ・セミ・クエーバーのエミ・エレオノーラなどなど、ホッピー周辺の腕達者が中心です。

 ここに16人編成の弦楽オーケストラを加えた大所帯です。メイキング映像を見ると、確かにミュージシャンの目の前には分厚い譜面があります。全編で75分、この複雑なシンフォニーをすべて書き上げたのかと思うと嘆息を禁じ得ません。凄い。

 もちろんザッパ先生の真似というわけではなく、その音楽語法をなぞりながら、ホッピー・ワールドが展開されています。ライナーで松山晋也氏はマグマやPファンク軍団を引き合いに出していますが、そこにとどまらずあらゆる音楽をミックスして洗練したような作品です。

 その題名が「意味のないものは、意味がある」です。音楽に意味を求めていくとどんどんつまらなくなっていきますから、総力戦シンフォニーは思いっきり意味がないことを謳歌しようじゃないかと正しい道を堂々と宣言しているように思います。

 「デジタル大統領」ホッピー神山、「スライド芸者」ホッピー神山。ザッパ先生同様、その存在が音楽そのものになってしまったような人ですから、その音楽が楽しくないわけがない。おっさんに向けて使う言葉ではありませんが、軽やかなそのサウンドは春風のようです。

A Meaningful Meaningnessless / Hoppy Kamiyama (2005 Creage)

残念ながら動画が見当たりません。悪しからず。