ポール・サイモンの初めてのライヴ・アルバムです。彼のライヴ・アルバムが発表されるのはサイモンとガーファンクル時代を含めても初めてのことです。精力的にライヴを行っていた人だけにようやく出たかという想いの方も多かったことでしょう。

 加えて、本作品はポール初の来日公演に合わせて発表されています。日本武道館での公演を見に行った方にとっては、堪えられないアルバムになったことでしょう。ネット上には思い出話がつづられています。うらやましい限りです。

 ポールは「ひとりごと」を発表した後、ワールド・ツアーを挙行します。そのツアーの模様を収録したのが本作です。録音場所はインディアナ州のノートルダム大学とニューヨークのカーネギー・ホールだと言われています。

 本作品には当初は12曲、CD化に際して2曲を追加し、計14曲が収録されていますけれども、どうやらライヴでは24曲ほど演奏したそうで、完全版の発売を待ち望んでいる人も多くいます。二枚組にすることは考えられなかったようです。

 このライヴは大きく3つの部分に分かれます。一つはもちろんギターの弾き語りによる演奏、もう一つはアンデスのフォルクローレ・バンド、ウルバンバとの共演、最後の一つはゴスペル・グループのジェシー・ディクソン・シンガーズとの共演です。

 ウルバンバはロス・インカスの別名です。と言えばわかる通り、「コンドルは飛んで行く」と「ダンカンの歌」でポールと共演したあのバンドです。ここではその2曲に加えて、S&Gの名曲「ボクサー」でも一緒に演奏しています。

 ジェシー・ディクソンはゴスペル歌手です。ポールは彼らのニューヨークでの公演を見て惚れ込み、ツアーに参加してもらうことになりました。このアルバムでは大活躍しており、「母と子の絆」や「サウンド・オブ・サイレンス」を始め、5曲を歌っています。

 ジェシー・ディクソン・シンガーズはポール抜きの曲も一曲収録されています。ウルバンバも彼らだけの演奏を行ったようですが、本作には収録されていません。ここはやはりボーカルの有無が大きいのでしょう。ぜひウルバンバも聴いてみたいものですが。

 さて、本作は「ひとりごと」ツアーですが、アルバムに収録されたのは「アメリカの歌」と「母からの愛のように」の2曲のみです。ボートラの2曲を加えると4曲ですが、ボートラですから。むしろ一番目立っているのはやはりS&G時代の楽曲です。

 「早く家に帰りたい」と「アメリカ」はフォーク・セットですが、「ボクサー」はウルバンバ、「サウンド・オブ・サイレンス」と「明日に架ける橋」はジェシー・ディクソン版です。特に後者のゴスペル・スタイルが曲に新たな息吹を吹き込んでいて秀逸です。面白いライヴです。

 MCでは客席からの♪セイ・ア・フュー・ワーズ♪がカッコいいです。当時、中学校の仲間内で流行りました。「アメリカ」での客席の盛り上がりもいいです。やはりポール・サイモンはとてもアメリカンなシンガーソングライターだなあとしみじみしたものでした。懐かしい。

Paul Simon in Concert : Live Rhymin' / Paul Simon (1974 Columbia)