「ウォーターフォールズ」のMVは衝撃的でした。ゆったりとしたリズムに合わせて水面に立って踊る三人は滝つぼにくると自身が水になってしまいます。1990年代半ばのR&B黄金期を象徴するにふさわしい名作MVでした。

 T-ボズ、チリ、レフト・アイの三人からなるガールズグループTLCはベイビーフェイスのレーベルからデビュー作を発表しました。そのアルバムもそこそこヒットしましたが、この2作目の前では霞んでしまいます。それほどこのセカンドは大きな成功を収めました。

 シングル・カットされた4曲はいずれも大ヒット、特に「クリープ」と「ウォーターフォールズ」は全米1位となりました。アルバムは全米1位こそ逃しましたが、結果的に1000万枚を超えるいわゆるダイヤモンド・ステータスを獲得しています。

 この快挙はガールズグループ初です。デスチャでもビヨンセでもなくシュープリームスでもなくTLCなんです。TLCこそが1990年代R&B黄金期を代表するアーティストです。日本でも当然大ヒットしており、多くの歌手に影響を与えています。

 アルバムには多くのプロデューサーが係わっています。全16曲のうちインタールードを除く11曲中、最も多いのがベイビーフェイスとダラス・オースティンの3曲ずつです。ジャーメイン・デュプリが2曲、新顔のオーガナイズド・ノイズが2曲、パフ・ダディーが1曲です。

 いずれ劣らぬヒップホップ界というかR&B界の超有名どころばかりです。最初のシングル「クリープ」はオースティン、「レッド・ライト・スペシャル」はベイビーフェイス、「ウォーターフォールズ」はオーガナイズド・ノイズと拮抗する三者のバランスがとられています。

 比べながら聴いていると、ベイビーフェイスはまるで歌謡曲の影響を受けているように感じられるのが面白いです。オースティンはこの時期を代表するゆるゆるのトラックですし、パフ・ダディーはプリンスのカバーをプリンスの枠を借りながらTLC節を醸して秀逸です。

 アウトキャストとの仕事で知られるオーガナイズド・ノイズが新鮮です。尾びれのついたような独特のリズムの「ウォーターフォールズ」は、レフト・アイのにゃんにゃん言うラップもアクセントとなった凄い曲です。T-ボズとチリの掛け合いも見事。

 最先端プロデューサー陣をその気にさせる三人はやはり只者ではありません。アルコール問題に苦しんでいたレフト・アイの貢献は少なめですが、その分、T-ボズとチリが頑張っています。二人の異なる声質をうまく使い分けていて感動的です。

 しつこく入る幕間の小曲では、「セクシー」でのチリのはじけぶりがいいです。男との掛け合いの中で喘ぎ声を高めていき、絶頂かと思いきや♪ケツを拭け♪ですからね。こうしたインタールードがアルバムの価値をさらに高めています。

 決して住みやすい社会じゃないけれども、いつもクレイジーでセクシーでクールであれ!と全身全霊をかけて主張するTLCです。実験的なサウンドに彩られた1990年代の最高峰となるアルバムでもって、TLCの姿勢を世界中に示したのでした。天晴。

CrazySexyCool / TLC (1994 LaFace)