あいみょんは何系のアーティストかと言われれば、私としては「タモリ俱楽部系」と申し上げたいです。他にどういう人がいるかと言えば、水曜日のカンパネラ、夢眠ねむ、トリプルファイヤー、マキシマムザホルモン、レキシなどなど。

 若い、それも十代の若者に大人気のあいみょんですが、歳を重ねた人たちのことも疎外しません。まだ24歳と若いのに、タモリ倶楽部で官能小説を語るという自由さが素晴らしい。きっと若い世代を代表するとかそういう気負いがまるでないのでしょう。

 そもそも名前が面白い。一見、ギャル系の愛称っぽくも思えるのですが、この響きは妙に心地よいです。歴史用語であると言われてもおかしくない響きなんです。みちょぱやゆきぽよとはそこが違います。特にみょん。私は愛染明王を真っ先に思い出しました。みょうだけど。

 「瞬間的シックスセンス」と題された本作品はあいみょんがメジャー・デビューしてから2作目にあたります。律儀なことに、2018年4月から11月に発表されたシングル曲3曲全て、さらに長編アニメのタイアップ曲2曲を収録するというファンにありがたい仕様です。

 シングルは「満月の夜なら」に始まり、グーグルのCMに使われ、紅白歌合戦でも披露した「マリーゴールド」、そして新垣結衣主演のドラマ「獣になれない私たち」の主題歌「今夜このまま」の3曲です。余談ですがケモナレはなかなか面白かったと思います。

 あいみょんは基本的にはギターを弾き語るシンガーソングライターです。それを田中ユウスケ, トオミヨウ, 関口シンゴ, 會田茂一の四人が手分けしてサウンド・メイクを手伝っていくという形ですが、激しいロック調の曲でもギターの弾き語りがベースに見えます。

 そうです。フォークを感じさせてくれます。あいみょん自身は吉田拓郎にガッツリハマっていたそうですから、フォークど真ん中です。彼女は懐メロが好きだったとも言っています。恐らくは子どもの頃から、過去から現在の世界中の音楽を身近にして育った世代なのでしょう。

 彼女の作るメロディーはフォークなりニュー・ミュージックを感じさせて返って新鮮です。先鋭的というよりもど真ん中。それでいて現代的でもある。四人のプロデューサー陣によるサウンド・メイクもちょうど良い感じです。演出が過剰にならない。

 それに歌詞が面白いです。なんたって♪ナンマイダー♪ですから。あいみょんのファン層をデジタル・ネイティブと表現することが多いですが、彼女の書く詞に反応する層はヒップホップ・ネイティブと呼んだ方が良いのではないでしょうか。

 とても自由度が高いのはヒップホップのリリックが身近にあった世代ならではです。ラップがあるというわけではないのですが、言葉の選び方が新世代です。さらに題材も。「グッド・ナイト・ベイビー」は痛い中年の純情の話ではないかと思うのですがどうでしょう。

 「ら、のはなし」や「from四階の角部屋」といった言葉選びのセンス、「恋をしたから」や「マリーゴールド」の直球ど真ん中の物語の瑞々しさなど、新鮮な驚きが広がります。平成最後に大物が登場したなとしみじみと感じ入ることとなりました。

Momentary Sixth Sense / Aimyon (2019 Unborde)