サイモンとガーファンクルは2003年にグラミー賞の特別功労賞生涯業績賞!すなわちライフタイム・アチーヴメント賞を受賞しました。授賞式では、久しぶりにデュオが復活して「サウンド・オブ・サイレンス」を披露し、大いに会場を沸かせました。

 これに気をよくした二人は大々的なリユニオン・ツアーに出ることになります。レコード会社も願ったりかなったりだったことでしょう。2003年10月に始まった売り切れ御免のツアーは全米各地で大成功に終わりました。後半にはヨーロッパも歴訪し、ここでも大成功でした。

 本作品はそのリユニオン・ツアーを収めた2枚組アルバムです。同時にDVDも発売されています。2003年12月のマディソン・スクエア・ガーデン及びコンチネンタル・エアラインズ・アリーナでの5回の公演からセレクトされました。

 ツアーは「オールド・フレンズ」と題されました。ポール・サイモンはもちろんアート・ガーファンクルもこの頃はばりばりの現役でしたけれども、この作品はほぼS&Gのヒット曲に特化したアルバムとなりました。究極のリユニオン・ライヴ・アルバムです。

 しかも、S&Gになる前、トムとジェリー時代の思い出を語り、ヒット曲「ヘイ・スクールガール」を披露するというおまけまでついています。さらに彼らの憧れだったエヴァリー・ブラザーズをゲストで招聘し、一緒に「バイ・バイ・ラヴ」を演奏しています。振り返りもここに極まります。

 ポールのソロからは「スリップ・スライディン・アウェイ」と「アメリカの歌」のみ選ばれました。決して「グレース・ランド」からは選ばれません。そして二曲ともアートがリードをとる場面が多く、デュオで歌いたかったソロ曲ではないかと思われます。あくまでデュオ優先。

 ステージはアコースティック・デュオのコーナーとバンド・コーナーに分かれているようです。バンドは7人編成で分厚い演奏を聴かせます。そこがこれまでのライヴとの大きな違いです。何ともゴージャスで、フォーク・ロックというより、普通にロックと言い切りたいです。

 特にザ・フーとの仕事で知られるピノ・パラディーノのベースの分厚い音が大きいと思います。全体に、2003年当時の音というよりも、もう少し前の時代のロックな演奏です。「冬の散歩道」のイントロで驚きましたが、慣れてくればこれはこれで味があります。

 時の流れは容赦なく、特にアート・ガーファンクルの歌声が歳をとりました。それはそうでしょう、活動休止から30年以上経過しているわけですから。それで、アルバムを聴き進めていくうちに、「明日に架ける橋」は大丈夫だろうかと不安が募っていきます。

 余計な心配ではありますが、恐らく観客も同様に感じていたに違いありません。ライヴの終盤でいよいよ披露される「明日に架ける橋」で、一部ポールの手を借りながらも、高音部もごまかすことなく、見事に歌い切ったことに、一際大きな感動の拍手が贈られました。

 リユニオン・アルバムとしては模範となるべき見事な作品です。ここには現役感は一切ありません。観客と一体となって若い頃を思い出すひと時を過ごすことに特化しています。それに耐えるだけの質の高い曲であり、演奏であるということを再発見することができます。

Old Friends Live On Stage / Simon & Garfunkel (2004 Columbia)