「今や、アメリカで最も人気と実力のあるギタリスト、ジョニー・ウィンターが、白熱のロックン・ロールを展開するライブ・アルバム!」が登場しました。やや誇張がある気がしないではありませんけれども、「百万ドルのギタリスト」の逸話はまだ健在でした。

 ジョニー・ウィンターの新たなバンドはジョニー・ウィンター・アンドと呼ばれました。いくら何でも「アンド」はないだろうと思いましたけれども、ソロではなくあくまでバンド名義にしたところにジョニーの心意気が感じられるということに長じてから気がつきました。

 ここに収録された怒涛のライブは1970年12月ニューヨークのフィルモア・イースト及び1971年1月フロリダのパイレイツ・ワールドの二つです。ライブでこそ燃えるジョニー・ウィンター・アンドの底力を存分に発揮したライブであったことが偲ばれます。

 メンバーは百万ドルのギタリスト、ジョニー・ウィンターに加えて、ギターにリック・デリンジャー、ベースにランディ・ジョー・ホブズ、ドラムにボビー・コルドウェルで合計4人のロックン・ロール編成です。キーボードなど何もなし。ブルース魂全開で気持ちがいいです。

 ボビーは後にキャプテン・ビヨンドで活躍する人で、AORのボビー・コルドウェルとは違います。レコードとしてはこの作品が彼のアンド・デビューです。それまではリックの兄弟でもあったアンディ・Zでした。ウィンター兄弟物語の他にデリンジャー兄弟物語もあったわけです。

 なお、アンディ、ベースのランディ、リックは「ハング・オン・スルーピー」のヒットで知られるザ・マッコイズのメンバーでもありました。そこからジョニーと合体してジョニーを支えていたわけです。マッコイズとジョニーというのはいつ聞いても不思議な取り合わせです。

 ジョニー・ウィンターは鳴り物入りのデビューの後、徐々に人気が下降線を辿っていましたが、この白熱のライブで一気に盛り返しました。やはりライブで燃える人です。ギターを弾きまくり、歌を歌いまくる。不思議と汗は飛び散りませんが、熱いこと熱いこと。

 アルバムの目玉は12分弱に及ぶ「イッツ・マイ・オウン・フォールト」でしょう。BBキングのレパートリーとして知られるブルースの名曲です。この曲をジョニーがマイク・ブルームフィールドのスーパー・セッションで弾いたことから伝説が始まったという曰く付きの曲です。

 無名のゲストとして深夜遅くに登場したジョニーの演奏は帰りかけていた客を総立ちにさせ、それを聴いたレコード会社が争奪戦を開始、結果、60万ドル、四捨五入して100万ドルの契約金でジョニーはRCAと契約したというものです。

 ただし、ボートラ収録されたフィルモアでのライブの方が私は好きです。なんたって倍の22分あります。11分でも物足りないわけです。ゾーンに入ったジョニー・ウィンター・アンドはいつまででも聴いていられます。二人のギターとジョニーの歌はともかく素晴らしい。

 ボビーのドラムがブルースっぽくないのもまた一興。ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、ロックン・ロール・メドレーから唯一のオリジナル「ミーン・タウン・ブルース」を経て、「ジョニー・B・グッド」で終わる突っ走るライブはカッコいいことこの上ありません。

Live / Johnny Winter And (1971 Coumbia)