ファンクはここから始まった、と言ってもあながち間違いではありません。今ではファンクという言葉は定着していますけれども、元をたどるとジェイムズ・ブラウンのサウンドに行き着きます。中でも「パパのニュー・バッグ」はその最初期の一曲です。

 この曲は1965年春にノース・カロライナで録音され、6月にはシングルとして発表されました。JBにとっては初のトップ10入りのヒットとなっています。なお、R&Bチャートでは当然のことながら1位、それも8週連続です。大ヒット。

 先触れは前年の「アウト・オブ・サイト」なのだそうです。この時、セッションに初めて起用されたのが、後に大活躍するサックスのメイシオ・パーカーとギターのジミー・ノーランなどです。彼らとともに、JBはファンクへとまっしぐらに進んでいきます。

 その最初の成果がこの曲と言えます。出だしでジャーンとなった後の、ホーンを多用したうねるようなリフ。ベースもギターもドラムもすべてが圧倒的な迫力で新しいサウンドの誕生を告げています。半世紀を経た今でも十分に新鮮な驚きをもたらしてくれます。

 このシングルはA面がパート1、B面がパート2とされ、パート2の方は基本はインストゥルメンタル曲となっています。そこも新しい。JBの歌を堪能した後は、静かにその演奏に耳を傾ける。ここでしみじみと時代を画するとはどういうことかが分かるというものです。

 というわけで、とにかくこの曲は画期的なわけですが、アルバム自体は寄せ集めです。「パパのニュー・バッグ」以外の10曲はいずれも1959年から1962年にかけて録音されていた曲です。しかも、すでに別のアルバムに入っていたものも多い。

 ビートルズが「ラバー・ソウル」を発表したのは1965年12月。それまでは、まだLPというものはシングル盤の寄せ集め以上の意味をもっていませんでした。それにキング・レコードは弱小レーベルでしたから、とにかく経営を回す必要もあっての粗製乱造でしょう。

 もちろんJBのことですから、曲が悪いわけではありません。シングルとしてヒットした曲やそのカップリング曲などが並んでいるので、聴き応えはあります。特にJBのボーカルとバック・コーラスとの絡みのあり方などはとても面白いです。

 曲はJBの自作もあれば、他のグループがヒットさせた曲のカバーもあり、スタイル的にも50年代スタイルやら、バラードやら、アップ・テンポやら、それなりにバラエティーに富んでいますし、アレンジャーとしてのJBという側面に注目しても面白いです。

 しかし、そうは言っても、「パパのニュー・バッグ」との落差が大きいのは如何ともしがたいです。録音日時もそこには短くて3年も隔たっています。まだまだJBも若く、脂ののってきた時期だけに3年は長い。スタイルの進化が起こってしまいました。

 その点では、冒頭に「パパのニュー・バッグ」を2曲とも並べて配置してくれたのはまだしも良心的だと思います。当時の米国LP事情からすればさほどあくどくもないのでしょう。まあ、名シングル盤なのでボーナス・トラック多数収録したのだと理解しておきましょう。

Papa's Got A Brand New Bag / James Brown (1965 King)