アニマルズ1965年の二作目です。この頃のアニマルズは特に日本ではローリング・ストーンズをしのぐ人気でした。英国においても、あのビートルズを脅かす存在とまで言われていた模様です。アニマルズはそれほど重要なバンドでした。

 私はリアルタイムではこの頃のことを知らないのですが、こうしてアニマルズのアルバムを聴くと、その理由が分かります。特にストーンズに比べると格段にちゃんとしているんです。エリック・バードンの力強いボーカルを始め、サウンドに隙がない。

 ブルース、R&Bの王道を行くアニマルズです。本作品は英国オリジナル盤を復刻したものですが、オリジナルは1曲のみで、あとはレイ・チャールズやボ・ディドリーなどのカバー曲で構成されています。それを正面から堂々と演奏する。ちゃんとしています。

 当時の英国のLPの例に漏れず、シングル曲は収録していません。しかし、そこはCD化のよいところで、このCDバージョンには本編12曲に対し、シングル曲を中心に11曲ものボーナストラックが収録され、ファン思いの愛ある仕様になりました。

 このため、アルバム発表直前のアラン・プライス脱退劇が鮮やかに反映されることになりました。アルバム発表後に発表された、デイヴ・ロウベリーを新メンバーとするシングル「朝日のない街」以降のトラックも収録されることになったんです。

 「朝日のない街」とは日本のレコード会社の悪癖が出ています。原題は関係ないのに代表曲「朝日のあたる家」にあやかりました。ついでに日本での大ヒット「悲しき願い」の次の作品は「悲しき叫び」。あまりの無邪気さに脱力してしまいます。

 話を戻すと、「朝日の当たる家」の印税を独り占めしたことに端を発したと言われる理由で、アランは、アルバム収録後、発表前に失踪してしまいました。好事魔多しということです。彼のブルース溢れるオルガンやピアノが大きな魅力だっただけに残念です。

 この作品におけるアランのオルガンやピアノは鬼気迫るものがあり、バードンのド迫力ボーカルやヒルトン・バレンタインの太いギターと四つに組んで素晴らしい演奏を聴かせます。しばしば弱点とされるチャス・チャンドラーのベースも悪くはありません。

 ついでにドラムのジョン・スティールもとりあえず誉めておいてメンバー紹介に代えたいと思います。この5人の演奏は尋常でないテンションですけれども、同時に実に折り目正しくブルースの王道を進んでいます。

 特にエリック・バードンの感情の赴くままに太い声でシャウトするボーカルはやはりアニマルズの核となっています。こんなにいいボーカリストだったかと今更ながらに感動しました。アメリカに渡って宣戦布告する素地は十分にあったというべきです。

 とはいえ、前作に比べると米国での成績は奮いませんでした。英米ではまるで収録曲が違うので同一アルバムとしては扱えないのですが、イギリスではもちろんトップ10ヒットです。ブルースの本場ですから、逆にちゃんとしすぎたアーティストは受けが悪いのでしょうか。

Animal Tracks / The Animals (1965 Columbia)