村八分は裸のラリーズと並んで日本のロック界のレジェンドです、という話を聞いて育ちました。私が少し遅い世代だというのもありますが、同世代だったとしても恐らく噂で聞くだけだったでしょう。それほど1970年代の日本のロック・シーンは田舎の子には遠かった。

 村八分は1960年代の終わりに結成され、1973年8月をもって解散しています。その後、1979年に再結成するもライブ数回で解散、1990年にまたその名が復活するなどしましたが、すでに柴田和志と山口冨二夫が鬼籍に入り、もはや復活はありえません。

 活動期間は短く、ライブ・アルバム一枚を残したのみでしたが、2000年代に入ると続々と音源が発掘されてはリリースされていきました。極めつけは「村八分BOX」で何とCD8枚とDVD1枚という大作です。レジェンドは残すものです。

 この作品は1973年1月6日、7日の両日、数々の伝説を残す京都大学西部講堂にて行われた「村八分公演」の音源です。観客がカセットで録音したものらしいです。客席からのカセット音質だと思うと、それにしてはなかなかよく録れた音だなあと思います。

 この時の村八分のメンバーは、ボーカルにチャー坊こと柴田和志、ギターに山口冨二夫、同じくギターに浅田哲、ベースに加藤義明、ドラムに村瀬シゲト、ローリング・ストーンズ仕様の5人組です。この面子は一般に黄金期のラインナップと言われています。

 山口冨二夫はグループ・サウンズ出身で、村八分に参加して以降、裸のラリーズにも参加していますし、ティアドロップスを始め、さまざまなバンド、あるいはソロで大活躍します。そのルーツとして村八分の名前を知った人も多いことでしょう。

 村八分ですから、それだけで異端児としてのバンドの立ち位置がよく分かるなかなか考えられたバンド名です。しかし、口にするのが憚られる言葉であることもまた事実、彼らの場合は歌詞にも差別用語とされた言葉が出てくるので、扱いが大変です。

 このライブでは、録音音質の問題があって、歌詞はほとんど聴きとれません。チャー坊のボーカルの凄味は伝わってくるのですが、歌詞に込められたメッセージは解読できず、ご紹介する私も残念に思いつつも気が楽になりました。

 サウンドは、山口冨二夫のギターを中心とするプリミティブなギター・ロックです。初期ローリング・ストーンズからブルース臭を抜いて、よりストレートな表現にしたような、と形容していくと、結局、パンクに行き着きます。早すぎたパンク・ロックと言われる村八分です。

 ギター小僧チャーがセックス・ピストルズを聴いて、村八分と同じだと言った話が昔から伝説として伝わっています。早回しされたピストルズの方がポップだと思うのですが、ピストルズに代表されるパンク勢の最大公約数的なサウンドを村八分には感じます。

 この頃の日本のアンダーグラウンド・ロック・シーンが熱心な方々によって一つ一つ発掘整理されていくのはありがたいことです。その対象としては、村八分以上のターゲットはなかなか見つからない。短期間で大きなインパクトを残したバンドならではです。

"Underground Tapes" 1973 Kyoto University / Murahachibu (2003 ユニバーサル)