セルフ・タイトルのアルバムですけれども、邦題は「スーパー・ジャイアンツ」です。ブラインド・フェイスは1960年代終わりごろに流行っていたスーパー・グループの一つですから、邦題はその意味合いを色濃く全面に押し出しました。

 ブラインド・フェイスのメンバーは、エリック・クラプトン、スティーヴ・ウィンウッドと説明不要のスーパースター二人に、ちょっと説明はいるけれどもスーパーなジンジャー・ベイカー、一人だけ無名と言われましたが、ファミリーなるバンドにいたリック・グレッチの4人組です。

 クラプトンとベイカーはスーパー・グループの走りであるクリームから。ウィンウッドは10代の頃から世間を騒がせていて、この当時はトラフィックの一員でした。いずれも当時のロック界を牽引するジャイアンツでしたから、世間の期待も大きかった。

 期待に応え、ブラインド・フェイスは1969年6月にロンドンのハイドパークで10万人の観衆を集めてデビューしました。そして、本作品を発表して、英米で1位を獲得します。その後、アメリカ・ツアーに出かけた彼らはその地で解散してしまいます。

 ですから、解散後に彼らを知った私にはスーパー・ジャイアンツの実感はありません。むしろ、長らくスーパー・スターの座に居座る二人がいたからスーパーなのかと思ってしまうくらいです。ましてやクラプトンもウィンウッドも知らなければ何のことだかわからないでしょう。

 ともあれ、ブルースに根差したブリティッシュ・ロックの上質の部分を代表するメンバーが集まって演奏を繰り広げるわけですから、悪かろうはずがない。しかも、激しいインプロビゼーションの応酬は最後にとっておいて、基本はタイトにまとまったバンド・サウンドです。

 曲作りも大半がウィンウッドですし、ボーカルもほぼウィンウッドですから、ウィンウッド色が強いですけれども、クラプトンのギターもベイカーのドラムもグレッチのベースもかなり自己主張をしています。クラプトンの定番となる「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」もこれが初出。

 ウィンウッドの溌剌としたボーカルも、すでに渋いクラプトンのギターも、ばたばたした力強いベイカーのドラムも、これぞブリティッシュ・ロックの王道だと思います。グレッチのバイオリンも忘れてはなりません。ところが、日本では発表当時は批判が強かったそうです。爺臭いと。

 この当時、ベイカーでさえまだ30歳。クラプトン24歳、グレッチ23歳、ウィンウッドに至っては21歳に過ぎません。驚異的な若さのスーパー・ジャイアンツであるにも関わらず、若さに欠けるというのが批判の理由です。確かに渋い。

 しかし、渋いからなんだというのでしょう。売れたくて集まったわけではない4人ですから、やりたい音楽を探求する気持は強かったでしょうし、それがサウンドにも表れています。そこが四人四様で緊張感を孕んでもいます。長続きしないバンドであることは最初から明らかです。

 「泣きたい気持」から「君の好きなように」まで6曲、ストーンズでお馴染みジミー・ミラーの泥臭いプロデュース・ワークもきまっており、1970年代のブリティッシュ・ロックを聴いていた体にぴったり隙間なくはまります。ブリティッシュ・ブルース・ロック、余裕の名作です。

Blind Faith / Blind Faith (1969 Polydor)