原題の「エ・プルリブス・ファンク」は、アメリカ合衆国の国章に書かれている「エ・プルリブス・ウヌム」をもじったものです。「エ・プルリブス・ウヌム」は「多数から一つへ」を意味し、多数の州からなるアメリカ合衆国を表すモットーでありました。

 それをもじって「多数からファンクへ」、ファンカデリックの「ワン・ネーション・アンダー・ア・グルーヴ」と共通する心意気が感じられます。もともとブラック・ミュージックをハード・ロックに持ち込むことに意識的だったグランド・ファンクならではです。

 ジャケットはコインを模っており、銀色が鮮やかなものでしたが、残念ながらCD化がややこしいことになってしまいました。単にコピーすると綺麗に出ない。特に裏面のシェア・スタジアムは何のことだか聞かなければ分かりません。

 ビートルズの記録を破った記念という意味合いがありそうです。ジャケット・コンセプトはプロデューサーのテリー・ナイト。このセンスが今一つです。そもそもグランド・ファンクが評論家連中にすこぶる評判が悪かった理由の一つはこのテリー・ナイトの所業です。

 テリーはデビュー作からプロデューサーを務めており、その戦略としてバンド・メンバーのマスコミへの露出を極力抑え、自身がスポークスマンとしてしゃしゃり出ました。このため、若いバンドはテリーの操り人形疑惑を受けていました。それでは評論家受けは良くない。

 このアルバムはテリーがプロデューサーを務めた最後のアルバムになりました。前作で随分アレンジがすっきりしましたが、このアルバムはその延長線上にあると言ってよいです。不器用なバンドから脱却して、タイトなサウンドへと展開しています。

 特に最後の曲「ロンリネス」ではオーケストラを起用するという冒険に出ています。これも評論家筋の評判はすこぶる悪いです。しかし、ファンの評価はそれほど悪くはありません。私も評論家ではないので、この試みは悪くないと思います。

 前作は前々作から10か月という、彼らにしては長いインターバルで発表されました。今回はまた以前に戻って半年強での発表です。これくらいの間隔の方が、生きがいいという、いかにも多作な彼ららしいことになっています。若いバンドはこうでなくちゃ。

 このアルバムも全米トップ5に入る大ヒットを記録しています。相変わらず英国ではチャート入りしていませんが、それも彼ららしい。アレンジにひねりが加わったにしても、アメリカンなストレートな泥臭いロックは英国では受けないわけです。

 その泥臭いロックは、冒頭のシングルカット曲「フットストンピン・ミュージック」から全開です。駆け抜けるようなビートをオルガンが煽る展開は心躍ります。野太いベースラインもカッコいいです。問答無用のグランド・ファンク節です。ただし、ちょっと洗練されてきましたが。

 ドン・ブリューワーとマーク・ファーナーという二人の実力派ボーカリストの役割分担もより明確になってきましたし、初期の混沌とした魅力こそ薄れてきたものの、代わりに陰影が出てきたので、これはこれで楽しめる作品になっています。勢いも強い。

E Pluribus Funk / Grand Funk Railroad (1971 Capitol)