グランド・ファンク・レイルロードはライブに定評がありました。時代は少し下って1971年7月9日、彼らが行ったニューヨークのシェア・スタジアムでのコンサートは、発売後わずか72時間でチケットが売り切れてしまいました。

 ビートルズのシェア・スタジアム・ライブは完売までに2週間かかっていますから、この事件はグランド・ファンクがビートルズを抜いたとして大いに話題になりました。観客の熱狂は凄まじく、さしものバンドの大音量も歓声に埋もれてしまったといいます。

 そうした熱狂ぶりをそのまま真空パックにして発表されたのがその名も「ライヴ・アルバム」です。アルバム・ジャケットの説明によれば、この作品は一切手が加えられていません。オリジナル・テープのまま、エコーのようなスタジオ操作も一切なし。潔い。

 ただし、一つのステージを完全収録したわけではなく、二つか三つのステージの音源から編集されています。いずれも1970年6月のクローサー・トゥ・ホーム・ツアーでの収録です。さすがにバックアップを用意しておく周到さは持ちあわせておりました。

 また曲順もLPフォーマットの制約からか、演奏順にはなっておらず、CD化に際してステージでの曲順に合わせて入れ替えられました。もともと、途切れることなく一気に聴くように編集されているとされていましたが、CD化でより忠実になったわけです。

 3枚目のアルバム「クローサー・トゥ・ホーム」発売直後のツアーではありますが、同作品からの曲は「ミーン・ミストリーター」1曲のみです。11曲中、ファーストから4曲、セカンドから3曲、MCに題名をつけただけのものが2曲、3人による即興が1曲。怒涛のライブです。

 スタジオでの処理がなされていないからと言って、もともとの音質が完璧だったわけではありません。CD化ですっきりしましたが、それでも音圧の強いハード・ロック・サウンドが団子状態でぐしゃぐしゃっと迫ってきます。技術の発達した今では考えられない音でしょう。

 しかし、もちろんそこが最大の魅力です。わずか3人による演奏。キーボードもなく、マーク・ファーナーのギター、メル・サッチャーのベース、ドン・ブリューワーのドラム、そしてマークとドンのボーカル。たったそれだけなのに、とにかく派手で武骨。

 特に大きくスタジオ作からアレンジを変えているわけでもなく、何も考えずに勢いで突っ走ったという風情の演奏はとにかく爽快です。70年代にこれを経験した人々は異口同音に素晴らしいと言います。ロックの原点。聴いている方も体を存分に使って演奏している気分になる。

 ジャケット写真は別のライヴでのものですけれども、レッド・アルバムと並ぶ渾身の写真です。中のサウンドはもうこの写真のまんまです。まるでジャケットから音が出ているようにすら感じます。これを飾って眺めながら聴くのが正しいと言えるでしょう。

 評論家受けは最悪でしたけれども、セールスは実に快調で、全米5位、初めてUKチャートにも入り、発売1週間でゴールド・ディスク、結局はダブル・プラチナ・アルバムになりました。何の解釈もいらないロック小僧の夢が詰まった一枚です。

Live Album / Grand Funk Railroad (1970 Capitol)