「ニューヨーク・パンクのセックス・シンボルとして脚光を浴びた、デボラ・ハリー率いるブロンディのデビュー・アルバム」です。ブロンディのオリジナル・アルバムからどれか一枚と言われれば、私は迷うことなくこのアルバムを選びます。

 冒頭の一文はアルバムの宣伝文句ですが、そもそもブロンディとパンクを結びつけることに違和感を感じる人も多いと思います。ブロンディも後に「コール・ミー」でディスコを席巻しますし、パンクもパンクでよりそのスタイルが絞られていきますから両者の隔たりは大きい。

 しかし、ブロンディはニューヨーク・パンク発祥の時代にその現場となったCBGBやマクシス・カンサス・シティーをレギュラーにしていたという、パンク・ムーヴメントの真っ只中にいたバンドです。こうしたバンドたちをパンクと呼んだといった方が正しい。

 ブロンディの中心は何といってもブロンドの妖女デボラ・ハリーです。彼女が4人の男たちを従えて歌う。ブロンディとはバンド名なのかデボラのステージネームなのか判然としないとまで言われたものです。それほどデボラが目立っていました。

 もちろんブロンディはバンド名で、音楽的な中心はデボラとギターのクリス・スタインのカップルでした。スティレットーズなるガールズバンドにいたデボラと、そのバックバンドにいたクリスが意気投合して新たに始めたバンドがブロンディです。

 デボラはコケティッシュな魅力にあふれ、セックスシンボルとして一世を風靡することになります。そのキュートなイメージとは裏腹に、意外に下積みの長い苦労人で、髪のブロンドも染色によるものですし、年齢もすでに30歳を超えていました。

 90年代になっても森高千里が女ざかりは19だと歌っていたことを思い出しましょう。デボラのこうした話は当時の私にはむしろとても新鮮に映りました。アメリカはやはりカッコいい国だということを再認識した次第です。ブロンディはカッコいいんです。

 このデビュー・アルバムはブロンディの原点です。モータウン風ながらアイデア一発勝負的な楽曲を、スピード感あふれる演奏で畳み掛けます。60年代のポップ感覚が満載され、決して上手ではない演奏で不器用ながらいろいろと試している姿勢がパンクそのものでした。

 冒頭のデビュー・シングルともなった「Xオフェンダー」への過小評価が私には気に入りません。チープなオルガンによるリフがカッコいいですし、歌メロも妙に可愛らしい名曲で、ブロンディ史上1、2を争う名曲だと思うのですが、どうも扱いが小さい。

 本作からはむしろ「愛してほしい」や「汚れた天使」の方が人気が高いです。前者は蜂蜜を垂らしたようなねっとりしたエロですし、後者はどすのきいたロックで、いずれもいい曲ですが、私はやはり「Xオフェンダー」推しです。

 アルバムは大して売れずにすぐに廃盤になりましたが、クリサリス・レコードに拾われてすぐに再発されてそこそこのヒットとなりました。後の大成功とは程遠いですが、NYパンクとしては売れた方です。だってパンクの魅力の一面がつまったアルバムですから。

Blondie / Blondie (1976 Private Stock)