ジャケットに写るのは不敵な面構えの二人組です。おまけに上部にはおちんちん型ロケットが地球を貫いているという、パンク仕様の極みのようなことになっています。しかし、日本盤発売はユニバーサル・クラシック&ジャズからです。

 クラシックではありませんから、これはジャズです。女性の方のジュネヴィーヴ・アルターディも自分たちの音楽の「スピリットはジャズだと思う」と語っています。来日公演はブルーノート東京でしたし、ここはとりあえずジャズに分類しておきましょう。

 ノウワーは公式サイトによれば、「ドラマー/プロデューサーとして活躍するルイス・コールとボーカリストのジュネヴィーヴ・アルターディの2人からなるLA発超絶ポップ・ユニット」です。そのサウンドは「ファンク/エレクトロ/ジャズ/ポップスがミックスされた」ものです。

 大学でジャズを学んだ二人は、それぞれに音楽活動をしていましたが、ロビー・マーシャルというサックス奏者のライブでサポートを務めたときに出会い、「ファッキン・クレイジーなものを作ろうぜ!」と、2009年に共作を始めたということです。

 ご多聞にもれず、彼らの出身はユーチューブです。ブリトニー・スピアーズやダフト・パンクなどの有名な楽曲をノウワー流にアレンジしてアップしたことで名前が徐々に知られていきました。そうして、アルバムをリリースしたり、フェスに出演したりとどんどん活躍していきます。

 クインシー・ジョーンズは「ノウワーを観た人は、『もっと聴かせてくれ!』とひざまずくだろう!」なんて言ってます。クインシーを唸らせたノウワーは、2017年夏のレッド・ホット・チリ・ペッパーズのヨーロッパ公演のオープニング・アクトに抜擢されるに至りました。

 この作品はノウワーの2枚目のアルバム「ライフ」です。配信限定でしたが、頑固な日本で待望の「世界初フィジカル商品化」がなされました。後発の強みとして、フェイスブック公開後あっという間に200万再生を記録したバンド版の「オーヴァータイム」をボートラ収録です。

 二人組で、アルターディはボーカリストですから、サウンドは基本的にコールが一人で作っています。必然的にエレクトロ全開なのですが、こうしてバンド版を聴いてみると、確かにジャズを感じます。根っこはジャズだと思って聴くと分かりやすいと思います。

 彼らは「自分たちの痒いところに手が届くような音楽を作っている」と語ります。「そういう意味で自分たちが好きな音楽を作っているだけかもね」とも。ユーチューバーなのに受け狙いに走らない。「自分たちが信じているやりたい音楽」をやるだけ、と自覚的です。

 そういわれると構えてしまいますが、「フルパワーでヘヴィでファンキー」なビートを効かせたエレクトロな音楽は、逆に奇を衒うこともありませんし、超絶に素直なサウンドなのでとても聴きやすいです。アルターディのボーカルもやさぐれた可愛さが素敵ですし。

 歌詞は刺激的です。♪政府はみてるんだ、お前がシコってる時♪とか、♪おしりとおっぱいとお金、私には金も美貌もなし♪とか。「人生は難解でクレイジーだ」と喝破する姿勢もまた素直で信頼できます。ジャズ・スピリットはこんなところに生きています。 

Life / Knower (2018 Knower)