2018年6月27日、ブルーノート東京で行われたニコラ・コンテ&スピリチュアル・ギャラクシーのライヴに行ってまいりました。良き友と一緒に美味しいお酒を傾けながら、極上の音楽に耳を傾ける。至福の時間ではありませんか。

 イタリアの伊達男ニコラ・コンテの率いるバンドは総勢8人。狭いブルーノートのステージいっぱいに並ぶメンバーは服装も髪型も人種も国籍もバラバラでまるで統一感はありません。ダイヴァーシティーの極みと言ってよいでしょう。

 しかし、というべきか、それだからこそ、というべきか、そこから生まれる音楽はそれぞれのメンバーによる相乗効果が極まって、それはそれは見事なサウンドとなっていました。リーダーなのにとても控えめなコンテの姿はバンドの民主的な性格の象徴でした。

 本作品はそのライヴのわずか1月前に発表されたアルバムです。7年前のアルバム「ラヴ&レヴォリューション」にもわずかに予兆はありましたが、今回のアルバムはアフロ・アメリカンなテイストで統一されています。ジャケットからしてプリミティヴ・クールです。

 コンテはこのところ「サン・ソング/ナイジェリア」、「アフリカン・スピリッツ/ニュー・ワールド・シャッフル」というアフロ・ジャズを基調とした12インチを発表、本作ではそれをさらに推し進め、コンテ自身が「コズミック・アフロ・ジャズ」ないし「アフロ・ソウル」と呼ぶに至りました。

 コンテの元に集まったスピリチュアル・ギャラクシーには、コンテと長く音楽活動を共にしているピエートロ・ルッスやジャンルカ・ペトレッラなどの他に、前作にも参加していたスウェーデンの有名なサックス奏者マグヌス・リングレンなど多彩なメンバーがいます。

 さらに、ライヴでもコンテ以上に目立っていた注目のトランぺッター、セオ・クロッカーや歌姫ブリジット・アモファー、ライヴには来ませんでしたが、南アフリカの一連のミュージシャンなどなど、多くのアーティストが心地好さげに演奏を繰り広げます。

 コンテには伊達男イメージが強かったものですから、正直、ここまでアフロなファンク・ジャズ・サウンドが展開されるとは意外でした。白黒か総天然色かの違いはあるにせよ、コンテの旧作の映画音楽イメージから、一気に生々しさを倍増したサウンドになりました。

 フェラ・クティのような繰り返されるうねるリズムに、ボーカルの掛け合い、アフリカンなフルートの導入などなど、アフリカのスピリッツを存分に表現して余念がありません。イタリアに加えて南アフリカのスタジオでも制作されたのはその証左です。

 ライヴは8人編成で本作品のサウンドをライヴ仕様に熱くしたものになっていました。みんなが好き勝手に演奏している様子がとても素敵でした。やはりグルーヴが世界を一つにするのであるというファンクの命題は正しかったと実感しました。

 スピリチュアルと言っても妙に重くはならないところがコンテらしい。新たな盛り上がりを見せているジャズ、クラシックなジャズ、クラブ・サウンドとしてのジャズ。こうしたジャズの諸相を見事にブレンドしてアフロ・ソウルで染め上げた力作と言えましょう。

Let Your Light Shine On / Nicola Conte & Spiritual Galaxy (2018 MPS)